日本酒の地理的表示(GI)とは?お酒に関わるGIについて解説
2023.04.19

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日本酒の地理的表示(GI)とは?お酒に関わるGIについて解説

日本酒を飲もうと思った時、どんな風に選んでいますか? 今回は日本酒選びの基準の一つにもなる「地理的表示(GI)」について紹介します。GIがもたらすメリットや日本国内のお酒に関するGIについても解説します。日本酒を選ぶ基準を増やすことで日本酒との距離が縮まり、日本酒をさらに美味しく味わえるはずです。

目次

  1. 日本酒を選ぶものさしの一つ、地理的表示(GI)
    1. 地理的表示(GI)とは
  2. 生産者にも消費者にもメリットがある
    1. 生産者のメリット
    2. 消費者のメリット
  3. お酒におけるGIとは
    1. 日本のお酒のGI
    2. 国レベルのGIに指定された「日本酒」
    3. 地域の日本酒の特性を打ち出すGI
  4. GIに指定された日本酒に目を向けてみよう

日本酒を選ぶものさしの一つ、地理的表示(GI)

GI(地理的表示)とは

「今晩は日本酒でも飲もうかな」と思った時、どんな基準で選んでいますか?
「久保田」「朝日山」といったブランドや、「吟醸酒」「純米酒」などの特定名称酒の分類、あるいは日本酒度など、日本酒を選ぶための基準は数多くあります。

その一つとしてあるのが「地理的表示GI:Geographical Indication)」。まずは、そもそもGIとはなにかを紹介します。

地理的表示(GI)とは

スーパーに並んだ商品を眺めたり、あるいは日本各地の食文化を紹介したテレビ番組を見たりしていると、生産地と強く結びついた農産品や食品をしばしば目にします。「夕張メロン」や「近江牛」、フランスのシャンパーニュ地方で生産されている「シャンパン」など、皆さんも色々と思いつくのではないでしょうか。

地理的表示(GI)保護制度とは、農産品や食品において、その確立した品質や評判、またはその他の特性が、地理的な産地に主として帰せられる場合において、その産地名を独占的に表示することができる制度です。国による厳正な審査を通過すると、その名称(GI)を知的財産として登録・保護してもらえます。「夕張メロン」や「近江牛」はその一例になります。

もう少し掘り下げると、次の①と②を満たすとGIを登録してもらえる、ということになります。

①生産地による特性
・特別な生産方法や伝統的な飼育方法などの人的要因
・気候や風土といった自然的要因

②産品の特性
・「〇〇な成分が多く含まれる」「〇〇な風味である」といった品質
・歴史的、文化的な評価、品評会での受賞歴などの社会的評価

登録後も、登録生産者団体は品質の管理を実施する必要があります。よって、GIのある農産品や食品は、まさにその産地で生産されて、その産地ならではの特徴と高い品質が保たれていると言えるでしょう。

裏を返せば、GIはその産地で生産されているもの全てに表示できるわけではなく、生産地に起因する特徴があり、かつ品質の管理体制が整っているものだけに表示できるということです。つまり、夕張市で生産されているメロン全てが「夕張メロン」を名乗れるわけではないのです。

生産者にも消費者にもメリットがある

かご盛りの野菜を持つ女性

GIに登録されると、どんないいことがあるのでしょうか? ここからは、生産者の立場、消費者の立場、それぞれで得られるGI保護制度によるメリットを順に見ていきます。

生産者のメリット

・品質の保証や他の産品との差別化、ブランド化ができる
・模倣品の排除、利益の保護ができる
これ以外にも、諸外国との相互保護により、国内だけでなく国際的にもその名称を保護してもらえる可能性があるため、安心して海外へ展開できるなどのメリットもあります。

消費者のメリット

・品質が保証された間違いのない産品を安心して買うことができる
GIにより、消費者はまさにその産地で生産されて、その産地ならではの特徴と高い品質が保たれている商品を簡単に見分けられ、購入することができます。GIの不正使用は禁止されていることから、産品にある表示を信頼して購入することができます。

また、保護する対象となった産品の名称にはその証として「GIマーク」を使用することができるようになります。登録されたGIと併せ、ラベルや包装に表示されるGIマークを確認すれば、迷うことなく安心・安全で、品質が保証された商品を購入できます。

お酒におけるGIとは

GI新潟

GIは日本だけでなく、100以上の国で導入されており、お酒には前述のシャンパンの他にスコッチウイスキーなどGIとして有名なものが世界の各地にあります。それでは、日本のお酒のGIはどのようになっているのでしょう?

日本のお酒のGI

日本でお酒のGIが創設されたのは、1995年のこと。その背景にあるのは、WTO(世界貿易機関)の発足です。WTO主要協定の中のTRIPS協定において、「ぶどう酒及び蒸留酒に係る地理的表示の多数国間の通報登録制度の設立」が項目にあり、加盟国はぶどう酒と蒸留酒のGIが義務となったのです。そのため、国税庁が制度を制定するに至りました。

このような背景もあり、お酒のGIとして最初に指定されたのは、「壱岐」「球磨」「琉球」の3つの産地の蒸留酒です。2023年4月現在で、蒸留酒の区分で4、ぶどう酒の区分で5、清酒の区分で13、その他の酒類の区分で1で、計23の産地がGIに指定されています。

お酒のGIは、そのお酒が「正しい産地」であることと、「一定の基準」を満たして生産されたことを示しています。

国レベルのGIに指定された「日本酒」

清酒区分の13のうちの1つは、「日本酒」という呼称自体です。2015年12月25日に国レベルのGIとして指定を受けているのです。

「日本酒」とは、清酒の中でも原料である米、米こうじに日本国内産米のみを使用し、日本国内で醸造したもののみを指します。海外で造られた清酒も増えつつありますが、そういった日本以外で製造された清酒や、海外産の米を使用した清酒が国内に輸入されたとしても、「日本酒」と表示することはできません。
GIに指定した背景として、日本酒は日本の明確な四季と結びつき発展してきた特別な飲料であり、伝統的に国民生活・文化に深く根付いてきたことから、日本が長年育んできた日本酒の価値を保全していくためという狙いがあります。さらに、日本酒のブランド価値向上を図り、海外への輸出促進にも大きく貢献しています。

地域の日本酒の特性を打ち出すGI

GI新潟

国レベルのGIである「日本酒」以外は、兵庫県の「灘五郷」や「はりま」など、国内の個々の地域で指定されたGIです。

GIに指定されるためには、日本酒の特性とその要因(人的要因、自然的要因)について評価されると共に、日本酒の原料や製法の取り決め、さらに指定された日本酒の特性をどうやって維持するか等も評価されます。ですから、GI指定されている地域や県などで造られる日本酒全てがGIを名乗れるのではなく、各GIの管理を行なっている管理機関(酒造組合等)の確認審査を通過した銘柄のみが、GIを名乗ることができます。

ここでは「GI新潟」を例にとって、詳しく見てみましょう。まず、GI新潟の酒類の特性としては、下記のように定められています。

新潟の清酒は、総じて淡麗な酒質を有している。 グラスから立ち上がる香りはまるで、朝霧のような優しさを持ち、口に含むとなめらかでさらりと溶ける淡雪のような味わいがある。米から生まれた淡い甘味が他の上品なうま味と混じり合い、余韻を残しながら消えていく。 このような、雑味の少なくきれいな味わいの酒質のものを、淡麗な酒であると呼称している。

そして、上記の特性を生み出す自然的要因と人的要因は、下記のように定められています。

●自然的要因: 新潟県は、本州の日本海沿岸のほぼ中央部に位置し、東側には朝日山地、飯豊山地、越後山脈が連なり、西側には妙高山などの山々がそびえ、信濃川や阿賀野川など数多くの河川が日本海にそそいでいて豊富な水資源を有し、その水質は総じて軟水である。 また、新潟県は降雪量が多く、冬は日照時間が短いものの、厳寒期でも極端な低温にならず、日中と夜間の温度差は少ない。積雪がもたらす安定した適度な低温は、清酒造りに使われる麹菌と酵母などの微生物の働きに最適な環境をつくる。 この豊富な水が優良な醸造用水として使用され、日中と夜間の温度差が少ない気候と相まって、新潟の淡麗な酒質が形成されてきた。
●人的要因: 新潟県は越後平野や高田平野といった広大で肥沃な土地が広がり、全国でも有数の穀倉地帯である。江戸時代には北前船の寄港地として栄え、ここで生産された米やその加工品である清酒が各地へ運ばれた。 江戸時代中期には農閑期に新潟の農民は地域外へ出稼ぎし、丹波や但馬などの西国杜氏のもとで酒造技術を取得すると、やがて様々な土地の気候・風土・水質・米質に適した酒造技術を考案して、その技能と勤勉さを買われて全国各地の酒蔵で酒造りを担う越後杜氏の集団が形成された。 昭和5年(1930年)に独立機関としては全国で唯一の県立清酒研究機関である新潟県醸造試験場が設立され、越後杜氏の蓄積した優れた酒造技術を理論化し、各企業の技術者の集まりである新潟清酒研究会では酒造技術の向上に関わる多様な研究課題に取り組み、様々な品質や条件の原料米でも高品質の清酒を製造できる技術を発展させてきた。 新潟県酒造組合では、製造技術の伝承に支障をきたす杜氏の減少問題に対応するため、全国初の「新潟清酒学校」を設立して酒造技能者の養成を実施していることに加え、企業横断的な情報交換及び研究の場として「新潟酒造技術研究会」を設け、現場で必要とされる技能の向上や伝統的な酒造技術、文化の伝承、酒造りに必要な心構えや姿勢といった酒造りの考え方の意識向上に努めてきた。 このような技術的な支えを基に、近代において変化しつつあった日本人のライフスタイルや食文化の洋風化への流れに適する酒質を目指して酒造りを行ってきた。その結果、新潟に定着した清酒の特性が淡麗であり、全国的に知名度が形成され、この特性が維持されてきた。

さらに、GI新潟を名乗るためには、原料と製法において満たさなければいけない項目があります。
原料においては、米及び米こうじに国内産米のみを使うこと、水は新潟県内で採られたもののみを使うことなどの条件があります。そして製法においては、酒税法が定める「清酒」の製造方法で、新潟県内にて造られたものであることや、製造工程上、貯蔵する場合は新潟県内にて貯蔵することなどが求められます。

GIに指定された日本酒に目を向けてみよう

その特性が強く産地に結びつき、かつ品質の高さも保証してくれる「地理的表示(GI)」。耳馴染みのない単語かもしれませんが、消費者も知っていて損はない制度です。
日本酒でもGIに指定されているものがいくつもありますので、GIに指定されているかどうか、というアンテナを貼って日本酒を探してみるのも一案です。