日本酒の種類はいくつある?「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」の違いを解説
日本酒は原料や製法などによって、いくつかの種類に分かれています。この記事では日本酒の「特定名称酒」のうち、「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」の3種類についてご紹介します。それぞれの特徴と魅力を詳しく解説しますので、日本酒を楽しむためにご活用ください。
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日本酒と清酒、どちらも同じ意味の言葉ですが、実は厳密には異なる意味があります。ここでは、日本酒と清酒の定義を解説するとともに、清酒の歴史や、清酒の種類である特定名称酒についても紹介します。
日本酒、清酒、普段何気なく使っている言葉かと思います。一般的には日本酒を使うことが多いかと思いますが、酒税法上では清酒と呼ばれます。どちらも日本酒を指す言葉ですが、実は厳密には異なる意味があるのです。
日本酒と清酒の違いを理解するために、まずはそれぞれの言葉の定義から確認していきましょう。
「清酒」とは、海外産も含め、米、米こうじ及び水を主な原料として発酵させてこしたものを広く指す言葉です。
国税庁の酒税法における清酒の定義は、下記のように定められています。
・米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの(アルコール分が22度未満のもの)
・米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(アルコール分が22度未満のもの)
清酒の製造過程において、米、米こうじ及び水を原料として発酵させたものを「もろみ」と呼びます。このもろみをこして、清酒と酒粕に分けることで、清酒が造られます。このもろみをこさないと、清酒ではなくどぶろくとなります。”こす”とは、その方法のいかんを問わず、酒類のもろみを液状部分とかす部分とに分離するすべての行為を指します。
また、その他政令で定める物品とは、醸造アルコールや糖類、有機酸、アミノ酸塩などで、その使用量には制限が設けられています。
「日本酒」は、清酒の中でも原料である米、米こうじに日本国内産米のみを使用し、日本国内で醸造したもののみを指します。そのため、海外産の米を使用した清酒や、日本以外で製造された清酒が国内に輸入されたとしても、「日本酒」と表示することはできません。
「日本酒」という呼称は地理的表示(GI)として、国レベルの地理的表示として、2015年12月25日に指定を受けました。
地理的表示制度は、酒類や農産品において、その確立した品質、社会的評価又はその他の特性が、当該商品の地理的な産地に主として帰せられる場合において、その産地名を独占的に表示することができる制度です。
GIに指定した背景に、日本酒は日本の明確な四季と結びつき発展してきた特別な飲料であり、伝統的に国民生活・文化に深く根付いてきたことから、日本が長年育んできた日本酒の価値を保全していくためという狙いがあります。
清酒の歴史は定かではありませんが、紀元前4世紀頃の縄文時代末期から弥生時代初期に始まったのでは、と言われています。稲作が日本に伝わるとともに、酒造りが始まったのではないかとされています。
その後奈良時代には、稲作も安定し、宮廷に造酒司(さけのつかさ)という組織が設けられ、宮廷の行事のための酒が造られるようになりました。平安時代に入ると、酒造りは寺院や神社などでも行われるようになりました。
鎌倉から室町時代にかけて、寺院のほかに酒屋も現れるようになり、酒造りが盛んになっていきました。
16世紀後半になり、現在の製法であるもろみを越して清酒と酒粕に分ける「諸白(もろはく)造り」という技術が生まれ、加熱殺菌である火入れも行われるようになりました。さらに、木桶による製造ができるようになり、多くの日本酒を造れるようにもなっていきました。
江戸時代には、さらに酒造りが盛んになり、「柱焼酎」と呼ばれる現在の醸造アルコール添加の技術も使われるようになり、大規模な酒造業も登場し始めました。
明治以降は、醸造技術や酒造機械の発展により大きく成長していき、現在の醸造業界の礎となっています。
清酒の中でも所定の要件を満たしたものは「特定名称酒」と呼ばれます。ここでは、特定名称酒の分類についてご紹介します。
清酒の定義と同様に、特定名称酒の分類も酒税法によって定められています。
特定名称酒は、大きくは吟醸酒・純米酒・本醸造酒の3種類に分けられ、原料や製造方法などの違いによってさらに8種類に分類されます。
まず吟醸酒は、低温でゆっくりと発酵させる「吟醸造り」が特徴です。その中でも精米歩合60%以下のものを「吟醸酒」、さらに50%以下を「大吟醸酒」と2つに分類します。香味は、フレッシュ・華やか・フルーティーなどと表現され、「吟醸香」とも称されます。
続いて純米酒は、米・米麹・水のみを原料とし、製造過程で醸造アルコールを添加しない清酒です。米本来の旨味や甘味、コクを強く感じられるのは、お米や水だけで造られる純米酒ならでは。精米歩合の要件がない「純米酒」と、精米歩合60%以下または特別な製造方法を要件とする「特別純米酒」の2種類があります。
そして本醸造酒は、醸造アルコールが含まれている清酒。その中でも、精米歩合70%以下の「本醸造酒」と60%以下の「特別本醸造酒」の2種類に分類されます。キリッと引き締まった味わいが特徴です。
残る特定名称酒は、「純米吟醸酒」と「純米大吟醸酒」の2種類です。この2つは、すでにご紹介した純米酒と吟醸酒、どちらの要件も満たし、両方の特徴を併せもった清酒といえます。
以上が特定名称酒8種の分類ですが、このうちどれにも該当しない清酒は、「普通酒」または「一般酒」などと呼ばれます。
清酒と日本酒は厳密には違う、ということが分かりましたでしょうか?
今度清酒のボトルを手に取った際に、ラベルや裏ラベルの表示をよく見てみてください。「日本酒」と書かれていれば、日本国内産の米で日本国内で造られたお酒ということです。
最近では、アメリカやヨーロッパなどの海外で造られた清酒も増えてきているので、もしそんな清酒を飲める機会があれば、ぜひラベルをチェックしてみてください。