当たり年も外れ年もない! 毎年同じ味の日本酒を造れる理由とは
ワインの味わいは原料であるぶどうの品質に影響を受けるため、年によって変わるのが一般的。それに対し日本酒は、毎年同じ味をしているものもあるようです。日本酒も米を原料としており、年によって米の品質は異なるはずなのに、どうしてそのようなことが可能なのでしょうか。実際に酒蔵に聞いてみました。
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9月から10月になると、いよいよ日本酒造りが本格的に始まる季節です。米・水・米麹から造られる日本酒ですが、このたった3つの原材料から、どのように日本酒が造られているのでしょうか?日本酒ができるまでの工程を一つ一つご紹介します。
米・水・米麹のたった3つの材料から造られる日本酒ですが、完成するまでには多くの蔵人の手が加わり、様々な工程を経ています。まずは日本酒ができるまでを簡単に紹介します。
酒造りは、原料となる玄米を精米し、白米にすることから始まります。その後、白米を洗い(洗米)、水に浸け(浸漬)、蒸す作業(蒸米)が行われます。蒸した米の2割ほどが、麹造り(製麹)に用いられます。
麹が完成すると、次の作業である仕込みに移ります。タンクに蒸米と麹と水を入れ、酵母を増やしていく、重要な作業です。仕込んだ後は、約1カ月間かけてじっくり発酵させていきます。
発酵を終えたら搾り、日本酒と酒粕に分け(上槽)、大半の日本酒は火入れを行い貯蔵します。数カ月から数年間貯蔵した後、香味を整え、瓶詰めをしてついに完成です。
ここからは一つ一つの工程をもう少し詳しくご紹介します。
酒造りの工程は、米を磨くところから始まります。
淡麗で清らかな酒を造るために米を精米し、脂質やたんぱく質など雑味につながる成分を削り落とすのです。また、米の種類や状態によって、適切な精米歩合も異なるため、米の分析を行い、その米の品質を精査。米の品質に合致した精米プログラムによって、最適な精米に仕上げています。
精米後の米に残っている米ぬかを、水で洗ってきれいに取り除きます。その後、米を水に浸して適切な量の水分を与えます。米は同じ品種でも、産地やその年の作柄、精米後の米の水分量などによっても吸水具合が異なってくるため、つぶさに米の様子を観察しながら、慎重に浸漬時間を調整します。
洗米・浸漬した米を、蒸気で一気に蒸しあげます。外は適度に硬く、内がふっくらやわらかい「外硬内軟」と呼ばれる状態を目指し、均一に仕上げます。蒸米の状態を把握するために、検蒸(けんじょう)と呼ばれる検査を行います。蒸米をひと握り手に取り「ひねりもち」を作って、杜氏自ら五感で確かめています。
「一麹、二酛、三造り」と言われるほど、製麹はその後の造りを左右する大切な工程です。朝日酒造の理想であるキレの良い味わいを実現する「突きはぜ麹(麹菌の菌糸が米のところどころに生え、かつ内部まで深く食い込んでいる状態)」を目指します。二昼夜にわたって作業を行い、じっくりと麹を育てていきます。
タンクに水と麹、蒸米を入れて「酛(酒母)」を造り、酵母を培養。酛が完成すると、いよいよもろみ仕込みです。酛に「添(そえ)」「仲(なか)」「留(とめ)」の3段階で水と麹、蒸米を追加し、糖化と発酵のバランスをとりながら、ときには攪拌し、経過観察していきます。絶えずもろみの品温や、状貌(じょうぼう=表面の状態)、香りを確かめながら、約1ヶ月かけて酒の完成を目指します。
発酵が終わったもろみを圧力をかけながら搾り、原酒と酒粕に分けます。搾った酒は、酵素の働きを止めるために火入れ(加熱処理)した後、必要に応じて香りをくずさないように急冷し、貯蔵タンクに送ります。場合によっては火入れをせず、生酒のままで次の工程へ進むものもあります。
火入れ後の酒は、それぞれに適した温度設定で一定の冷却温度を保ち、貯蔵タンクで数ヶ月から1年ほど貯蔵されます。タンクごとに0.1℃単位で厳密に温度管理され、その酒がもっとも美味しくなる状態を保ちます。酒は貯蔵中の熟成により、まるみのある穏やかな味わいへと変化します。
貯蔵されていた酒を、それぞれの銘柄が目指している理想的な酒質にするため、調合や濾過、加水を行います。ブレのない安定した味わいを生み出すために、小試験による品質確認を行ないます。この試験の結果をもとに、実生産の工程の組み立てを行い、商品となる酒が完成する重要な工程です。
ガラスに覆われた衛生的な環境で酒を瓶詰めした後、機器と目視で検査を行っていきます。安全性を高めながら、1時間に一升瓶4,000本の瓶詰めが可能です。こうして、朝日酒造の技と粋を結集した酒が、お客様のもとへ届けられるのです。
精米から発売できるまで、数カ月から貯蔵によっては1年以上かかる日本酒。
蔵人たちが酒の状態に細心の注意を払いながら、大事に大事に育てています。また、毎年毎年、造りに工夫を加えながら、より美味しいお酒を目指して日々醸しています。
日本酒一本に、多くの蔵人の技と想いが詰まっていることを感じながら、ぜひ楽しんでください。