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日本酒の造り方を解説!開放発酵でも負けない、酛(酒母)ともろみの「仕込み」
2020.12.11

特集

日本酒の造り方を解説!開放発酵でも負けない、酛(酒母)ともろみの「仕込み」

日本酒は米・水・米麹から作られるお酒です。この3つの原材料から、どのように日本酒が造られているのか、一つ一つの工程にスポットをあてて紹介していきます。第五回目は、 元気な酵母を培養するための酛(酒母)と、発酵させアルコールを生み出すもろみを造る「仕込み」工程です。

酒造り工程

まずは日本酒ができるまでを簡単に紹介します。
酒造りは、原料となる玄米を精米し、白米にすることから始まります。その後、白米を洗い(洗米)、水に浸け(浸漬)、蒸す作業(蒸米)が行われます。蒸した米の2割ほどが、麹造り(製麹)に用いられます。
麹が完成すると、次の作業である仕込みに移ります。タンクに蒸米と麹と水を入れ、酵母を増やしていく、重要な作業です。仕込んだ後は、約一カ月間かけてじっくり発酵させていきます。
発酵を終えたらもろみを搾り、日本酒と酒粕に分け(上槽)、大半の日本酒は火入れを行い貯蔵します。数カ月から数年間貯蔵した後、香味を整え、瓶詰めをしてついに完成です。

それでは本題の「仕込み」に入りましょう。
これまでの工程、洗米・浸漬・蒸米・製麹は、料理に例えるなら「材料の下準備」。ここからいよいよ「調理」が始まっていきます。

酒母

まずは、麹と蒸米、水、酵母、乳酸をタンクに入れて「酛(酒母)」を造り、酵母を培養します。その後「もろみ」の仕込みに。酒母に、麹、蒸米、水を追加し、品温管理をしながら元気な酵母をさらに増やし、もろみを発酵させていきます。

それでは、酛(酒母)造りともろみの仕込みについて、詳しくご紹介していきます。

酛(酒母)造り

酒造りの重要な工程を表した、「一麹、二酛、三造り」という言葉がありますが、一に「麹造り」、二に「酛造り」、三に「もろみの仕込み」が重要であるとの意味。この言葉の通り、「酛造り」は大切な工程のひとつなのです。
酛造りの目的は、アルコール発酵を行う元気な酵母を、大量に培養すること。まさに酵母を生み育てる“酒の母”という言葉がぴったりの工程です。

酒母造り

小型のタンクに、麹と蒸米、水、酵母、乳酸を入れ、櫂棒(かいぼう)を使って、タンク内の内容物を均一にし予定の品温になるようかき混ぜます。蔵人同士で息を合わせ、テンポよく混ぜることが、均一にさせるコツです。
タンクは蓋をせず開放状態で、日々品温管理をしながら、約二週間かけて酵母を培養していきます。

酒造りへの想い

「朝日酒造は約40種類以上ある商品の酒質に合わせ、様々な品質の米や酵母を使っています。また、仕込み日や銘柄すべてが同じ条件でも、酒母も生き物ですから、仕込んだタンク1本1本に違いが出ます。
酒母の個性をいかに把握し、育成管理をし、理想の品質へと導けるか。大きな変化が起こってしまう前に、いかに“小さな気付き”ができるかが勝負です。混ぜている時のわずかな感覚の違いや、品温の差など、今までの経験やデータを活かして、元気な酵母を育てています」
(酒母担当・番場)

もろみの仕込み

前述の酒母に、麹・蒸米・水を三回に分けて、徐々に加える量を増やしながら、もろみを仕込みます。これは「三段仕込み」という伝統的な仕込み方法です。
一度に量を増やすと、酵母数や酸、アルコールが一気に薄まり雑菌に汚染されやすい環境になってしまうため、三回に分けているのです。

「三段仕込み」は四日間かけて行われ、各仕込みを、「添(そえ)」「仲(なか)」「留(とめ)」と呼んでいます。

一日目:添仕込み
酒母に、麹・蒸米・水を加えます。きめ細かな動作と目配りで泡の状貌や香味を観察できるよう、小さなタンクで仕込みます。

添仕込み

タンク内のもろみの品温が均一になるようかき混ぜ、理想の発酵経過へと導きます。
仕込み温度は約12℃。日本酒は低温で発酵させるのが特長です。

二日目:踊り
二日目は、仕込み作業を休み、酵母の十分な増殖を待つ期間です。これを「踊り」といい、“階段の踊り場(休む所)”が由来といわれています。

踊り

仕込みを休む=麹・蒸米・水を加えないというだけで、蔵人は休んではいません。もろみを検液し、櫂棒でかき混ぜ硬さや米の溶け具合を確認し、発酵を管理しています。
「踊り」の日の状態は、この後の発酵経過を左右するほど重要です。

三日目:仲仕込み
二段目の「仲仕込み」では、一段目の「添仕込み」の約2倍の量の、麹・蒸米・水を加えます。そのため、3tの大きなタンクにもろみを移します。

仲仕込み

原料処理の蒸米チームと連携をとりながら、加える蒸米の温度を調整していき、目標とする仕込み温度にしていきます。長年培ったチーム力が発揮される瞬間です。

蒸米温度確認

一日目の仕込み温度は約12℃でしたが、今回は約8℃。徐々に品温を下げています。約一ヶ月間のもろみ管理で狙った酒質になるよう糖化と発酵のバランスを考え、品温を決めています。
もろみの仕込みは、泡の状貌や香味の観察だけではなく、品温や化学分析などデータに基づいた育成管理もカギとなってきます。

四日目:留仕込み
仕込みの最終日、三段目の「留仕込み」です。二段目の「仲仕込み」の、さらに約2倍の量の麹・蒸米・水を加えます。仕込み温度は約6℃とさらに下がります。
段々と仕込み量が増えているので、かき混ぜるにもかなりの力が必要。腕力だけでなく、全身を使いながらかき混ぜ、タンク内を均一にすることで、理想の品温を目指しています。

酒造りへの想い2

「お酒を育てるのは、子供を育てるのと似ています。道を外さぬように導き、時に見守る。彼らを一人で育てることはできません。周りの人々、仲間、蔵人ひとりひとりが役割を果たし、サポートすることで一人前のお酒に。酒造りはまさにチームプレー、“和醸良酒”なのです」
(仕込み担当・佐藤)

酛造り、添仕込み、踊り、仲仕込み、留仕込みという次工程への橋渡し。「良酒を醸す」という同じゴールに向けての想い、団結力を感じる工程でした。
次回は、発酵を終えたもろみを搾り“日本酒”が生まれる工程、「上槽・火入れ」をご紹介します。