日本酒の造り方を解説!酒質の決め手となる“麹”造りの工程「製麹」
2020.11.20

特集

日本酒の造り方を解説!酒質の決め手となる“麹”造りの工程「製麹」

日本酒は米・水・米麹から作られるお酒です。この3つの原材料から、どのように日本酒が造られているのか、一つ一つの工程にスポットをあてて紹介していきます。第四回目は、 麹を造る工程「製麹(せいきく)」です。製麹は、その後の工程や酒質を左右する、酒造りにおいてとりわけ重要な工程です。

酒造り工程

まずは日本酒ができるまでを簡単に紹介します。
酒造りは、原料となる玄米を精米し、白米にすることから始まります。その後、白米を洗い(洗米)、水に浸け(浸漬)、蒸す作業(蒸米)が行われます。蒸した米の2割ほどが、麹造り(製麹)に用いられます。
麹が完成すると、次の作業である仕込みに移ります。タンクに蒸米と麹と水を入れ、酵母を増やしていく、重要な作業です。仕込んだ後は、約1カ月間かけてじっくり発酵させていきます。
発酵を終えたらもろみを搾り、日本酒と酒粕に分け(上槽)、大半の日本酒は火入れを行い貯蔵します。数カ月から数年間貯蔵した後、香味を整え、瓶詰めをしてついに完成です。

それでは本題に入りましょう。

麹

「製麹(せいきく)」とは、麹造りのことです。酒造りの重要な工程を表した、「一麹、二酛(もと)、三造り」という言葉がありますが、一に「麹造り」、二に「酛造り」、三に「もろみの仕込み」が重要であるとの意味。麹造りがどれほど重要なのかが見て取れますね。

麹は、蒸米に麹菌を繁殖させて造ります。完成した麹はもろみの発酵過程において、米のデンプンを糖に変えるという重要な役割を担っています。そしてこの糖を酵母が食べることで、アルコールが発生し、お酒となるのです。
また、米のたんぱく質を分解し酒の旨味に繋げる酵素や、酵母の増殖を促進する栄養素など、麹から出る様々な成分が酒質に影響を与えています。
麹の品質で、酒の品質も変わる。高品質な酒造りには、高品質な麹造りが必要不可欠なのです。

麹造り

朝日酒造では、「久保田」の酒質の特長であるキレの良さを出すため、「突きはぜ麹」を造っています
「突きはぜ麹」とは、麹菌の菌糸が米のところどころに生え、かつ内部まで深く食い込んでいる状態です。突きはぜ麹はもろみ中でゆっくりと程よく溶けるため、雑味の少ない、清らかな味わいのお酒に仕上がります。

麹菌

麹造りは、麹室(こうじむろ)と呼ばれる、室温が30℃前後の部屋で行います。蒸米に麹菌の胞子をふりかけ、二昼夜にわたって異なる作業を行い品温管理し、じっくりと麹菌を育てていきます。
それでは、詳しくご紹介していきます。

一日目

まずは、適切な温度まで冷ました蒸米を搬入します。これを「引き込み」と呼んでいます。そして蒸米の塊をもみ崩し、広げて、品温と水分量を調整します。「外硬内軟」の蒸米が適していて、麹菌は水分を求めて中心部へ向かって入っていきます。逆に外側に水分が多いと、菌が楽をして中には入っていってくれません。

種切り

品温と水分量が目標値になったら、いよいよ「種切り」です。麹菌の胞子を蒸米にふり、米一粒一粒に均等に胞子がつくよう、混ぜていきます。
混ざったら山積みにし、全体を布で包み、乾燥を防ぎます。湿度の高い環境をつくることで、胞子の発芽・増殖を促進しています。

二日目

翌朝、麹はいわば、一日放置したご飯のようにくっついて硬い状態に。そこで「切り返し」を行い、麹の粒を離します。山を崩し、混ぜて、品温を均一にしていきます。

盛り

その後すぐに行う作業が、「盛り」。麹を一定の厚さに盛っていく作業です。表面積を少なくし、積層内部に熱をこもらせることで、品温の低下を防ぐのです。麹の育成には、適度な熱が欠かせません。

仲仕事

昼に行う、「仲仕事」。「麹室での、今日の真ん中の作業」という意味です。麹の積層を広げることで、品温のムラをなくし、麹へ酸素を供給します。

最後の作業は、「仕舞仕事」です。読んで字のごとく、「今日のお終いの作業」という意味。この頃になると、麹から栗のような特有の香りがするようになり、噛むと甘味も感じられます。
積層をさらに広げることで、発熱が盛んになってきた麹の熱を逃がし、乾燥させていきます。

品温管理

仕舞仕事後、数時間すると麹は最高温度の40~43℃となり、品温はほぼ一定に。あとは品温を確認しつつ、水分量を調整していきます。

そして翌朝、麹のはぜ込み具合や香りと味わい、手で握ることで硬軟を確認し、目標の品質となっていれば、完成です。

製麹への想い

「麹の品質は、わずかな時間や手入れの違いで、大きく変わります。例えば、積層の厚さが1cm違うだけでも、水分量やはぜ込み具合などが、目で分かるほど変わります。また、米も麹菌も生き物で個性があるので、マニュアルは通用しません。それぞれに適した育て方をすることで、目標品質の麹を造っています。」
(製麹担当・小林)

「酒を造る」よりも、「酒を育てる」という言葉の方がしっくりくるのではないか、そんなことをふと感じる工程でした。
次回は製麹後の工程、「仕込み」をご紹介します。