日本酒の造り方を解説!数秒単位の管理が要の工程「洗米・浸漬」
2020.10.09

特集

日本酒の造り方を解説!数秒単位の管理が要の工程「洗米・浸漬」

日本酒は米・水・米麹から作られるお酒です。この3つの原材料から、どのように日本酒が造られているのか、一つ一つの工程にスポットをあてて紹介していきます。第二回目は、精米後の工程の「洗米・浸漬」。酒造り用の米は、精米し、洗い、吸水させてから使用しています。普段食べている飯米と同じ流れですが、酒造りにおいては時間管理が非常に重要となります。

 (6243)

まずは日本酒ができるまでを簡単に紹介します。
酒造りは、原料となる玄米を精米し、白米にすることから始まります。その後、白米を洗い(洗米)、水に浸け(浸漬)、蒸す作業(蒸米)が行われます。蒸した米の2割ほどが、麹造り(製麹)に用いられます。
麹が完成すると、次の作業である仕込みに移ります。タンクに蒸米と麹と水を入れ、酵母を増やしていく、重要な作業です。仕込んだ後は、約1カ月間かけてじっくり発酵させていきます。
発酵を終えたら搾り、日本酒と酒粕に分け(上槽)、大半の日本酒は火入れを行い貯蔵します。数カ月から数年間貯蔵した後、香味を整え、瓶詰めをしてついに完成です。

それでは本題に入ります。酒造りの第二ステップである「洗米・浸漬」について紹介します。

 (6245)

玄米は精米された後、酒蔵へ運ばれ、さらに目標の品質となるよう「洗米・浸漬」を行います。
「洗米」とは米を洗い、糠を落とすこと。精米された米の表面には糠がついており、糠はお酒の雑味の原因となるアミノ酸を多く含むため、ここでしっかりと落とします。洗米は第二の精米ともいわれています。
「浸漬」とは米に水を吸わせることです。普段食べている飯米と同じ流れですが、酒造りにおいては「時間管理」が非常に重要になります。

洗米・浸漬時間は、米の品種やその年の出来具合、精米歩合といった米の状態、気温や湿度といった外部環境により様々です。また、酒造りに使用する米は、飯米よりも精米歩合が高いため、吸水スピードが速く、数秒の違いで米の吸水具合も変わってしまいます。
目指す品質の米となるよう、これまで蓄積したデータと蔵人の経験を活かし、その時々に合った洗米・浸漬時間の管理を行っています。

 (6247)

「久保田 萬寿」の洗米・浸漬の作業中です。萬寿に使用する掛米の精米歩合は33%と非常に高いため、一俵の洗米時間は約17秒とかなり短くなります。
その後、約10分ぐらい浸漬します。吸水時間が足りなければ、水不足で十分米が蒸されず、吸水時間が長すぎれば、やわらかい蒸米となりもろみの発酵過程で溶けすぎてしまいます。

米の吸水具合とストップウォッチの経過時間を入念に確認していました。

 (6249)

「あくまでストップウォッチは時間を測るもので、米の吸水具合を見極めるのは僕たちです。担当者となってから10年が経ちましたが、杜氏や先輩の隣で学んだ経験を活かしつつ、自分なりの判断視点も持って、その時々に合わせた時間管理を行っています。」
(精米・浸漬担当・久保)

 (6251)

浸漬させた米は「目玉」を見て、米の吸水具合を確認します。「目玉」とは、米の外側から水が浸透し白くなっていきますが、米の中心部の水を吸っていない透明な部分のことです。
この時点では「目玉」を残すことで、パスタのアルデンテと同じで、中心に少し芯が残っていた方が、やわらかすぎない程よい硬さの蒸米に仕上がります。

浸漬後は、水を切って米の重さを量り、吸水率を算出。人と機械のダブルチェックにより、品質管理を徹底しています。
この後は一晩かけて水をしっかり切り、均一な水分量の米に仕上げてから、蒸す作業に入ります。

数秒単位の時間管理が要となり、その時々の米の状態や外部環境に合わせて行う「洗米・浸漬」。まさに“いつも通り”は通用しない、酒造りならではの魅力を感じる工程でした。
次回は洗米・浸漬後の工程、「蒸米」をご紹介します。