栄養豊富な酒粕の甘酒を家庭で作ろう。美味しいアレンジ方法も紹介
酒粕(さけかす)とは日本酒の製造過程でできる栄養豊富な副産物のことです。食物繊維やビタミンなどの栄養素を多く含み、健康面や美容面での効果も注目を集めています。酒粕で作った甘酒を飲めば、体があたたまり、冷え性の改善も。本記事では、そんな酒粕甘酒の魅力や基本の作り方、手軽で美味しいアレンジレシピを紹介します。
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伝統的な発酵飲料である甘酒には、大きく分けて「酒粕甘酒」と「米麹甘酒」の2種類があり、その原材料や製法は異なります。本記事では、原材料の酒粕と米麹の違いやノンアルコール甘酒についての解説、甘酒をよりおいしく楽しめるアレンジレシピ、自宅で簡単にできる米麹甘酒の作り方などを紹介します。
目次
見た目は似ていても、実は多くの違いがある2種類の甘酒。ここでは、酒粕甘酒と米麹甘酒の原材料、造り方、アルコール分の違いについて解説します。
【酒粕甘酒】
酒粕の原材料となるのは、米・米麹・水をアルコール発酵させた「もろみ」。このもろみを搾ることで日本酒が造られ、搾りかすとして残ったものが酒粕です。酒粕甘酒は栄養価の高い酒粕と酵母菌の発酵パワーが凝縮されており、酒粕の持つ日本酒特有の香りが感じられるのが特徴です。なお、酒粕甘酒には味を調整するために砂糖や塩が加えられます。
【米麹甘酒】
「米麹」とは、蒸した米に麹菌を繁殖させたものです。味噌や醤油など、日本の伝統的な発酵食品の原料でもあり、日本酒造りにおいても「一麹二酛三造り」という言葉があるほど重要な工程です。米麹甘酒の原材料は、この米麹と水のみのものと、米麹と水と米のものがあります。砂糖は使われていません。
日本酒造りにおいてアルコールを出す「前」の米麹と、アルコールを出した「後」の酒粕。いずれも日本酒造りの工程に関わっていますが、造り方には違いがあります。
【酒粕甘酒】
酒粕を水で溶かしたものに砂糖で甘味を加え、塩で味を調整します。酒粕には、白いものと茶色がかった酒粕の2種類がありますが、甘酒には白い酒粕を使用します。茶色い酒粕は熟成しているため、甘酒よりも粕漬けに適しています。
【米麹甘酒】
米麹甘酒は、酵素の力で米麹を溶かして造られます。米麹と水を用意し、酵素の働きを良くする45度前後の温度で8~10時間保つと完成です。麹菌には米のデンプンを糖に変える力があるため、米麹で造られる甘酒には加糖の必要がありません。米麹の自然な甘味が米麹甘酒の特徴です。
酒粕甘酒には、微量ながらアルコールが含まれます。
酒粕を加熱することによって、ある程度のアルコール分を減らすことができますが、それでも0%にすることはできません。一般的な市販の酒粕甘酒は、アルコール1%未満のものが多くなっています。
その点、米麹にはアルコールが含まれていないため、米麹甘酒はすべてノンアルコールです。
妊婦や授乳中の女性、子ども、車を運転する予定がある人は必ず米麹で造られたノンアルコール甘酒を選ぶ必要があります。市販の甘酒を購入する際には、原材料を確認しましょう。
砂糖を使用せず、アルコール分を含まない米麹甘酒には、魅力がたっぷり詰まっています。米麹甘酒の味わいの特徴や栄養成分などを紹介します。
酒粕甘酒からはお酒の香りが感じられますが、米麹甘酒はお酒の香りがせず、香り自体も控えめです。また、米麹甘酒は、デンプンによるやわらかな甘味が特徴。飯米を噛んだ時に感じる、自然で優しい甘味を堪能できます。
米麹甘酒は、その栄養価の高さから「飲む点滴」とも呼ばれています。
発酵によって造り出されるさまざまな栄養素と、その働きについて解説します。
・ブドウ糖
ブドウ糖は、脳にとって唯一のエネルギー物質となる重要な栄養素です。赤血球や筋肉を正常に動かすためにも使われます。また、ブドウ糖を摂取すると、疲労回復にも良いとされています。
・オリゴ糖
オリゴ糖にはビフィズス菌などの善玉菌を増やす働きがあり、腸内環境を整える効果が期待できます。積極的に摂取したい栄養素のひとつです。
・ビタミンB群
ビタミンB群は糖質・脂質・たんぱく質をエネルギーに変えるサポート役です。ストレスに強い体づくり、免疫力アップにも良いとされています。また、ビタミンB群が不足してしまうと体調不良や便秘などの原因になることも。こちらも積極的に取り入れたい栄養素です。
・必須アミノ酸
必須アミノ酸は、酵素として代謝を調節する他、体内でいくつもの重要な働きをします。代謝アップ、貧血や冷え性などのマイナートラブル解消にも。必須アミノ酸は、体内で合成することができないため、食物によって摂取する必要があります。
この他にも、米麹に含まれるセラミドなどの物質には肌の保湿機能を助ける働き、美肌効果も期待できます。
また、米麹甘酒のコクのある味わいは高い満足感が得られるため、朝食やおやつなどにもぴったりです。
甘酒はそのまま飲んでも美味しいですが、ちょっとしたアレンジを加えることで、より楽しみ方が広がります。また、甘酒が得意ではない方も、アレンジすれば美味しく飲めると評判です。こちらでは、甘酒のアレンジ例を3つ紹介します。好みの甘酒を使って試してみてください。
作り方:甘酒と無糖タイプのヨーグルトをグラスに同量入れて混ぜる
ヨーグルトの酸味が甘酒の独特な風味を和らげ、甘酒が苦手な人もおいしく飲むことができます。爽やかなヨーグルトの風味を加えた甘酒は、暑い夏にもぴったり。フルーツを加えると、さらに印象が変わります。
作り方:グラスに甘酒を注ぎ、甘酒100ccに対して小さじ1程度のきな粉を加えて混ぜる
きな粉の風味やコク、甘味が甘酒にマッチします。きな粉を加えることで、より強く甘味を感じられるので、甘いものを飲みたいときにもおすすめ。ココアパウダーやホイップクリームなどを加えると豪華になります。
作り方:甘酒とトマトジュースをグラスに同量入れて混ぜる
甘酒とトマトジュースを合わせることで、両方の個性がマイルドに。ほどよい酸味とさっぱりした甘味で、甘酒とトマトジュースのどちらかが苦手な人でも飲みやすくなります。さらに甘酒とトマトジュースの両方の栄養を摂取できるので、健康や美容を意識する人にもおすすめです。
甘酒を毎日楽しみたい人や、手作りで安心できる甘酒を飲みたい人は、自宅で米麹甘酒作りに挑戦するのはいかがでしょうか。手軽に温度管理ができる炊飯器やヨーグルトメーカーを使った作り方を紹介します。
<材料>
乾燥麹:200g
炊き立ての飯米:2合
水:350cc(生麹を使う場合は、水の量を270ccにしてください)
<作り方>
1.炊飯器の釜の中に、炊きたての飯米と水を入れて混ぜる
2.水の温度が60℃になったら、麹を加えてしっかり混ぜる
3.炊飯器を「保温」にセットし、蓋を開けたままふきんをかけて55℃に保ち、10~15時間保温する
4.途中、数回かき混ぜる
<材料>
・乾燥麹:100g
・炊き立ての飯米:1合
・水:175cc(生麹を使う場合は、水の量を135ccにしてください)
<作り方>
1.ボールなどの容器に飯米と水を入れて混ぜ、温度を60℃程度に下げる
2.1に麹を加えてしっかり混ぜる
3.清潔にしたヨーグルトメーカーの内容器に2を入れて、本体にセットする
4.本体の蓋はせずにふきんをかけ、60℃で10~15時間保温する
5.途中数回かき混ぜる
豊富な栄養素を手軽においしく摂取できる甘酒。甘酒には酒粕を使用したものもありますが、米麹から造られたノンアルコール甘酒なら、子どもや妊婦でも安心して飲むことができます。炊飯器やヨーグルトメーカーを使えば、手作りの米麹甘酒が楽しめます。時間をかけて作った米麹甘酒は、味わいも格別です。そんな甘酒を、家族みんなで楽しんでみてはいかがでしょうか。