みんな大好き「すき焼き」年末はちょっと贅沢にすき焼きを囲んでみませんか?
2023.12.15

楽しむ

みんな大好き「すき焼き」年末はちょっと贅沢にすき焼きを囲んでみませんか?

海外でも「SUKIYAKI」として人気の高いすき焼き。戦後の高度成長期には一般家庭に広まり、自宅で食べるご馳走の代名詞となっていて、すき焼きが食卓に上る日はちょっと贅沢でワクワクするものです。甘辛い味付けは白飯にぴったり、白飯に合うものは日本酒との相性も間違いありません。すき焼きレシピのバリエーションを紹介します。家族ですき焼きを楽しみましょう。

目次

  1. すき焼きの語源と歴史
  2. 関西風すき焼きと関東風すき焼き
  3. 日本酒と相性抜群 すき焼きレシピ
  4. すき焼きを囲みながら日本酒を堪能しよう

すき焼きの語源と歴史

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すき焼きの語源は諸説あり、薄切りにした食材の「すき身」、風流で洒落れた意味の「数寄」ではないかという説がありますが、関西の「魚すき」や「沖すき」からというのが文献にも残っているため最有力です。
江戸時代中期、鋤(すき)と呼ばれる農具を鉄板代わりにして焼いた魚を魚すきと呼び、その鋤で肉を焼いたものを「すき焼き」としていました。
すき焼きとは関西地方での呼び名で、関東では牛肉にネギを加えて平鍋で煮る「牛鍋」が主流でした。1867年に東京の芝に牛鍋屋が開業されたのが最初で、明治時代に入ると多くの牛鍋屋が立ち並び賑わうことに。しかし、当初の牛肉は固く臭いもあったために味噌で味付けされていました。その後、肉の質が良くなるにつれ、豆腐や白菜など他の具材も加わり、醤油と砂糖で味つけするなど改良が進んでいったのです。
関東に「すき焼き」が入ってきたのは大正時代の関東大震災がきっかけです。多くの建物が崩壊した関東大震災ですが、牛鍋屋も被害を受けてほとんどが閉店に追い込まれました。復興するにつれ関西のすき焼きが伝わり、すき焼きと牛鍋の良いとこどりのような、割り下を使って煮込む関東風すき焼きが完成されていきました。

関西風すき焼きと関東風すき焼き

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すき焼き発祥である関西のすき焼きは、まさに “焼く” すき焼きです。鍋に牛脂をしき、牛肉を広げて焼いたあと野菜や豆腐など具材を入れ、砂糖と醤油を直接加えて味付けします。炒め煮のような感覚で焼いた香ばしさとしっかりした甘辛い味付けが特徴。
関東風は牛鍋の名残もあり “煮る” すき焼きです。砂糖や醤油、酒など調味料を合わせた割り下を用意し、鍋に割り下を入れて火にかけ牛肉と具材を入れて煮込んでいきます。汁気が多いため鍋に近く、割り下によって味が一定となり家庭でも作りやすいため広まっていきました。

日本酒と相性抜群 すき焼きレシピ

定番!割り下で煮込む「甘辛すき焼き」

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【材料】2人分
・牛肉:200g
・白菜など野菜類:適量
・焼き豆腐:1/4丁
・牛脂:少々
・たまご:2個
・水:1/2カップ
・昆布:5cm程度

A
‐醤油:大さじ4
‐みりん:大さじ3
‐砂糖:大さじ1

【作り方】
① 鍋にAの材料を入れて一煮立ちさせ、水と昆布を入れ、牛脂、肉、野菜を加える。
② それぞれ火が通ったら、たまごに絡めて食べる。

甘辛いすき焼きは大人も子供も大好きな味で、一般家庭で作りやすいすき焼きレシピです。人数が増えた場合は割り下の比率を守りながら調味料の量を増やしましょう。
お酒は「久保田 純米大吟醸」が相性抜群です。りんごのようなフルーティーな香りのする純米大吟醸は、カプロン酸エチルが含まれています。この香りが牛肉の脂と非常に相性が良いのです。カプロン酸は脂肪の一種で、酵母が糖分をたくさん食べた時にエタノールと反応してカプロン酸エチルと変化します。低温で発酵させることにより脂肪酸のうちのカプロン酸が多くなるため、吟醸造りをしているお酒はすき焼きと合わせやすいでしょう。

牛鍋の元祖「みそすき焼き」

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【材料】2人分
・牛肉:200g
・白菜など野菜類:適量
・焼き豆腐:1/4丁

A
-みそ:大さじ4
-酒:大さじ4
-砂糖:大さじ4
-だし汁:1/2カップ

【作り方】
① 鍋にAの材料を入れて一煮立ちさせ、肉、野菜を加える。
② それぞれ火が通ったら食べる。

醤油が一般的になかった時代は味噌を使っていました。しかし、味噌のコクと旨みはそれだけでも十分で、牛肉の香りが苦手な人も美味しく食べられる優秀な調味料のため、味噌すき焼きを定番にしたいと思うくらいの仕上がりです。
合わせるお酒は「久保田 萬寿」。萬寿のフルーティーな香りはカプロン酸エチルの他に甘くねっとりとしたバナナに例えられる酢酸イソアミルも含まれます。この香りの相乗効果で牛肉の脂はもちろんのこと、味噌のコクにも負けずにお互いに引き立てあう組み合わせなのです。酢酸イソアミルは、アミノ酸を分解したり合成したりする経路の物質の変化で生まれます。この反応に重要な酵素の働きは不安定なため、低温で発酵させなければなりません。そのため、低温発酵させる吟醸造りのお酒には濃度の違いがありますがフルーティーな酢酸イソアミルを感じることができます。味噌すき焼きには、吟醸や大吟醸といったお酒を選んでみてください。

究極の「魯山人風すき焼き」

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【材料】2人分
・牛肉::200g
・ねぎなどお好みの野菜、具材: 適量
・大根おろし:適量
・牛脂:適量
・醤油:適量
・酒:適量

【作り方】
① 鉄鍋を温め、牛脂をなぞってよく脂を出す。
② 牛肉を焼き、酒少々をふって醤油で味付けし、大根おろしで食べる。
③ 野菜は牛肉が終わった後の鍋に出汁を入れて煮、醤油で味付けをし、大根おろしで食べる。

食に関して多くの逸話を残している北大路魯山人。魯山人の書いた本を読み返しても食通ぶりが伺えます。
「食べたいだけの肉を焼き、絶妙のタイミングで食べ終えてから、食べたい分だけの野菜を入れ、少量のだしを注ぎ、味付けして煮る」のが魯山人風。砂糖を使わないことと、大根おろしで食べるのが特徴で、これにより肉本来の味が堪能できる究極のすき焼きです。
お酒は「久保田 千寿」の常温、「久保田 千寿 純米吟醸」のぬる燗がおすすめ。鍋にふるお酒も千寿を使うとより一層相性抜群に。程よい酸とスッキリした味わいでキレが良い千寿は、牛肉の脂を流しながら大根おろしともよく合います。

ちょっとアレンジ「ビビンバ風すき焼き」

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【材料】2人分
・牛肉:200g
・もやし、ねぎ、ピーマンなど:適量

A
-醤油:大さじ2
-コチュジャン:大さじ1
-砂糖:大さじ1
-おろしにんにく:1かけ分
-鶏がらスープ:1/2カップ
-ごま油:小さじ1

【作り方】
① Aの材料をよく混ぜ合わせる。
② 鍋に具材と①を入れて火にかける。

コチュジャンでピリ辛の変り種すき焼き。食べ終わったあとは白飯を入れてたまごを落とし、中火〜強火にして焼くように仕上げればビビンバ風となります。
お酒は若干フルーティーで米の風味がある「久保田 純米吟醸にごり」、麹の香りがふわりと抜ける「久保田 スパークリング」がおすすめ。スッキリとしてちょっと甘めの「久保田 ゆずリキュール」をロックにしても後味が軽快になります。

すき焼きを囲みながら日本酒を堪能しよう

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少し贅沢感のあるすき焼きは、年末や年越しに食べる家庭が多いのではないでしょうか。定番の甘い醤油味だけでなく牛肉を味わうすき焼きレシピは様々。今年はいろんなすき焼きに挑戦してみてください。
最後はうどんを入れてすき焼きうどんにすると飲んだ締めに最適。日本酒片手に牛肉を食べるのは1年頑張ったご褒美にもなります。家族みんなですき焼きを楽しみましょう。

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まゆみ

まゆみ

酒匠、料理研究家。 1日も欠かすことなく酒を呑み続ける驚胃の持ち主。酒と蕎麦と音楽を愛する。著書「うち飲みレシピ」「スバラ式弁当」。