【KUBOTAYA座談会】温度を変えたら別人に!? ファンと探す温度ごとの久保田の美味しさ
久保田の意外な味わいや新しい楽しみ方などを、久保田ファンの皆様と一緒に飲んで話しながら見つけていくイベント「KUBOTAYA座談会」。第1回は、「温度帯」をテーマに開催しました。
楽しむ
燗酒というと寒い季節にクイっと飲むイメージですが、実は日本酒の美味しさをより楽しめる奥深い飲み方であり、一年を通して楽しめる飲み方です。そこで今回は、熱燗の伝道師として全国で活躍中の熱燗DJつけたろうさんにご登場いただき、初心者から玄人まで楽しめる燗酒の世界をひも解いていきます。
目次
つけたろうさんに熱燗の魅力を語っていただく前に、まずは定義について予習していきます。
日本酒は燗をつけたり、常温で楽しんだり、冷蔵庫で冷やしたり、温度を変えることで味わいが変化する世界的にも珍しいお酒です。温度を高めることで旨味や風味が増す「燗上がり」と称される銘柄も数多くあります。
温めた日本酒のことを「燗酒(かんざけ)」と呼び、熱燗やぬる燗といった呼び名が一般的ですが、実は温度帯によってそれぞれ呼び名がつけられていて、
・日向燗(30℃前後)
・人肌燗(35℃前後)
・ぬる燗(40℃前後)
・上燗(45℃前後)
・熱燗(50℃前後)
・飛び切り燗(55℃前後)
と、温度帯によって6種類に分けられています。
基本的に燗酒は、温度が上がるに従って香りと味わいが引き締まっていくのが特徴。50℃前後の「熱燗」になると、香りと味わいがくっきりシャープになり、甘味を感じにくくなり、辛口になるのが一般的だとされています。
燗酒は基本的にはどんな日本酒でも楽しむことができますが、お酒の種類や飲む人の好み、合わせる料理、楽しむ場所などによって、合う・合わないがあります。また、先ほど記した「温度帯」によっても、合う・合わないが存在します。
ここでは「熱燗」に焦点を当て、どんな日本酒を熱燗にすると美味しくなるのかポイントを紹介します。
熱燗には濃醇でコクがある、どっしりとした味わいの日本酒が向いているといわれています。
種類でいえば「本醸造」「生酛(きもと)造り」「山廃仕込み」などが熱燗に向いており、料理にも合わせやすいといえるでしょう。
日本酒の「酸度」もまた、選ぶときのポイントになります。
酸度とは日本酒の味わいに酸味や旨味をもたらす有機酸の量を表す数値のことですが、熱燗にするには酸度の高い日本酒が適しているといわれています。その理由は、酸度が高いほうが甘味が少なく、温めたときにコクや辛味を感じやすくなるため。逆に日本酒の酸度が低いと、甘さを感じやすくなってしまい、熱燗らしい深みのあるコクが和らいでしまうとされています。
人の嗅覚には気温が低いと匂いを感じにくく、高いと香りを感じやすいという特徴があります。日本酒も同様に、燗をつけることで香りが開き、ふくよかな味わいを楽しむことができます。しかし、香りが強くなりすぎてしまうと、旨味のバランスが取れなくなってしまうことも。温めたときにほどよく香りを放つものを選ぶことが、燗酒を美味しく飲むテクニックになります。
ひと口に熱燗といっても、さまざまな魅力を持っています。
ここからはつけたろうさんに、熱燗の極意や自宅での楽しみ方を教えていただきます!
「日本酒に対する愛情を熱燗で表現する」をモットーに、熱燗の美味しさを日本中にそして世界に広めるべく奔走している“燗酒”の専門家。IT企業勤務時代に燗酒を専門にしたお店ですごく美味しい一杯と出会ったことから魅力に取りつかれ、2018年より熱燗DJとしての活動をスタート。現在は料理人とコラボレーションしたペアリングの提案、イベント出演、紹介制の会員限定酒屋「つけたろう酒店」など、精力的に活動中。
https://hotsake.jp/
燗酒といえば、とっくりに日本酒を入れて湯せんで温めるのが一般的ですが、つけたろうさんによると、実はとっくりで付ける方法は少し難易度が高いので、初めての人にはおすすめできないといいます。
では、家庭で美味しく熱燗を付けるには、どのような方法が合うのでしょうか。
「とにかく簡単にというのであれば、僕のイチオシは耐熱ガラス容器に入れて温める方法です。“ちろり”というお鍋に引っかけて温めるお燗用の酒器も便利ではありますが、美味しくなるタイプの“ちろり”を用意しようとなると値段がお高くはなってしまい、家庭用としてはおすすめできません。そこで使っていただきたいのが、化学の授業でおなじみの耐熱ガラス製の『平底フラスコ』です。平底フラスコは底が平らで安定して燗を付けられる上に、ビジュアル的にドキドキ・ワクワクとした気持ちを高められますよ」
用意するのは平底フラスコ、直径25cm程度の鍋、そして料理の温度を測るスティックタイプのデジタル温度計の3つ。さらに、飲むときに使うとっくりとお猪口を準備しておきます。
鍋に水を張って火をかけ、日本酒を入れたフラスコを湯せんにかけて温めていきます。温度と香りを細かくチェックする姿は、まさしく化学の実験のよう。
「ただ熱して飲むだけではなく、できるだけ実験をしてもらいたいんですよ。
匂いを嗅いで変化を確認したり、温度によって味にどんな変化が起こるのか確かめたり。常温で味見したら30℃から60℃を超えるまで、さまざまな温度で味わいを試し、そのお酒の最適の味を見つけてほしいと思います。
温めるときはこまめにフラスコを振り、均一な温度になるようかきまぜながら燗つけしてください。また、フラスコと一緒にとっくりもお湯に浸けて温めておき、飲むときにお酒をとっくりに移すと、適温が長く保たれ美味しさを保つことができますよ」
「使いやすさや洗いやすさでいえば、耐熱ビーカーもおすすめです。もっと本格的に!というのであれば、錫(すず)製、または銅製の“ちろり”で燗を付けるといいでしょう。
電気式の『燗どうこ』と呼ばれる熱燗器があるとガスを使わずに一定温度で湯煎できるので便利ですが、こちらもなかなかのお値段なのでお財布と相談して手に入れてみてください。炭を入れて使う持ち運びができる古道具の燗どうこは、アウトドアにもピッタリ。また、大人数で楽しむ場合は、お湯を張った寸胴鍋に一升瓶や四合瓶を浸けて温めてもワイルドで楽しいと思います(瓶ごと燗つけるときには栓を外して湯煎してください)。
燗酒を作るとき、絶対に使ってほしいのがデジタル温度計。スティックタイプでセンサー針が長いものを選ぶと、フラスコで燗を付けるときに温度が計りやすくなります」
基本的な熱燗の付け方をマスターしたら、もう少し踏み込んだ楽しみ方を試してみましょう。
つけたろうさんがKUBOTAYA読者のために考案してくれた、簡単なのに美味しい熱燗アレンジレシピをご紹介します。
「久保田のお酒でいろいろ熱燗を試してみた結果、『久保田 純米大吟醸』で作る組み合わせがベストであることが判明しました。非常に繊細な味わいで絶妙なバランスの上で成り立っている素晴らしいお酒のため苦戦しましたが、少し複雑なレシピになったものの、とても美味しいのでぜひ試してみたください」
【材料】
・久保田 純米大吟醸:120㏄
・甘納豆:適宜
【作り方】
①錫のちろりに久保田 純米大吟醸を120cc入れる
②鍋に水を張って火にかけ80℃に温めたら、ちろりを入れて湯煎しお酒を63℃まで温める
③氷水にちろりを入れ、お酒を32℃まで急冷する
④耐熱ビーカーにお酒を移し替え、再び鍋で湯煎し46℃まで温める
⑤事前に温めておいた徳利に移し替え、2分ほど置いておく
⑥温めておいた平杯(お猪口)に甘納豆を2粒入れ、燗酒を5㏄ほど注ぐ
「平杯の甘納豆と燗酒を一気に口に入れ、噛みながらゆっくり飲んで味わいましょう。口の中で甘納豆と酒が混じり合い、大人のおしるこが出来上がりますよ
ひと手間もふた手間もかかる作り方ですが、味は保障します。ご家庭では若干再現が難しいかもしれませんので、もうちょっと簡単に作りたいという人は耐熱ガラスのビーカーやフラスコを使い、55℃まで湯煎してから⑥の行程に移るだけでも美味しく楽しめます」
熱燗DJつけたろうさんおすすめの「久保田 純米大吟醸」以外にも、熱燗にすることで旨味が際立つ久保田をご紹介します。試してみてお気に入りの一本に出会いましょう。
※こちらの記事内で紹介した商品の価格は2020年11月7日現在のものです。
伝統的な醸造方法の山廃仕込みによる純米大吟醸。どっしりとした旨味を感じさせながらも、さわやかでシャープな酸味、キレのある軽いのど越しが魅力。燗酒にすることで旨味が増し、奥行きのある味わいが楽しめます。
久保田 碧寿
1,800ml 5,030円(税込5,533円)
720ml 2,230円(税込2,453円)
口当たりが柔らかく、程よい酸味とキレが楽しめる千寿の純米吟醸は、常温~燗酒でいただくのがおすすめの一品。燗酒にすることで、コッテリとした料理との相性が高まります。おすすめは人肌~上燗。すっきりとした旨味が際立ちます。
久保田 千寿 純米吟醸
1,800ml 2,800円(税込3,080円)
720ml 1,300円(税込1,430円)
300ml 650円(税込715円)
辛味と酸味が調和した純米吟醸酒。ドライでありながら口当たりがやさしく、日本酒が苦手な女性でも手に取りやすい味わいに仕上げられています。熱燗にすることでフルーティーな香りが引き立ち、料理との相性も高まります。
久保田 紅寿
1,800ml 3,310円(税込3,641円)
720ml 1,500円(税込1,650円)
「夏に熱燗って、実はおすすめなんです。エアコンや冷たい飲料で冷えた内臓を温め、胃腸を活性化させるのに熱燗がひと役買ってくれます。アルコールの分解も早いので、二日酔い予防にも。暑い夏だからこその熱燗をぜひ楽しんでください」
と、つけたろうさん。
美味しい熱燗の付け方のポイントは、丁寧な温度管理と酒器の選び方にあり。まずは手に入りやすい道具をそろえ、熱燗を楽しんでみてください。きっとさらなる日本酒の世界が広がりますよ。
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取材協力先:醸造酒&燻製 十
Photo_Kohji Kanatani Interview & Text_Megumi Waguri Edit_Yasushi Shinohara
住所:東京都中野区東中野1-30-15 スペースM B1F