初心者向けチャートで見つかる! 日本酒「久保田」の選び方
名前やボトルを一見しただけでは、どんな味わいかイメージしづらいのが日本酒です。本記事では、どれを飲んだらいいのか分からないという初心者向けに、おすすめの日本酒「久保田」のタイプが分かる診断チャートを公開します。たどり着いたタイプの「久保田」を足掛かりに、日本酒の世界へ踏み出してみませんか?
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「速醸酛」とは、現在造られている日本酒のほとんどで採用されている製法です。あまりにメジャーであるがゆえ「生酛じゃない方」という認識の人も多いのではないでしょうか。本記事では、速醸酛の製法の特徴や、速醸系酒母で造られたおすすめの日本酒を紹介します。
目次
「速醸酛」とは、日本酒の土台と言える酒母を造る製法の一種です。現代の日本酒のほとんどで採用されている製法で、ラベルに特に記載がない場合は速醸酛で造られたものです。そのため言葉自体は知らずとも、日本酒を口にしたことのある人の大半は、恐らくすでに速醸酛を味わっているはず。言葉は知っている人であっても、「生酛じゃない方」というイメージが強いのではないでしょうか。
現代の日本酒界になくてはならない大定番の製法でありながら、飲まれる時にあまり意識されない速醸酛について、本記事を通して今一度しっかりと学びましょう。
速醸酛の解説に先立ち、まずは酒母が日本酒造りにおいていかに大事かを説明したいと思います。
日本酒は米、米麹、水をアルコール発酵させて造りますが、それら原料をタンクに入れて混ぜ合わせるだけでは日本酒になりません。最初に、「酛(もと)」とも言われる、日本酒を醸造するための土台となる酒母を造ります。
酒造りの世界には「一麹、二酛、三造り」という言葉があり、日本酒造りで最も重要な「麹造り」に次いで「酛造り」、そしてもろみを仕込む「造り」が重要であるという意味です。様々な要素が複雑に影響し合いながらできていく日本酒ですが、酒母の中にアルコール発酵をしてくれる優良な酵母をどれだけ培養できるかという点も、その良し悪しを決める要素の一つ。よって蔵人は、毎日徹底した衛生管理や品温管理をしながら、酒母の状態を確認しています。
酒母は、米、米麹、水が入ったタンクに優良な清酒酵母を入れ、酵母を大量に育てていきます。そうすることで次工程の「もろみ造り」にて発酵を滞りなく進められます。
酒母の造り方は大きく速醸(そくじょう)系と生酛(きもと)系の2つに分類されます。どちらの製法にも共通しているのは、
①酵母を培養し大量増殖させること
②乳酸の力でタンク内を酸性に保ち、酵母以外の雑菌の侵入を防ぐこと
の2点になります。
日本酒造りは開放状態で行われるため、清酒酵母の働きを阻害する雑菌がタンクに入り込んでしまう恐れがあります。酒母に清酒酵母を入れた直後は酵母菌の数が少なく、雑菌の侵入を防ぎきれないのです。そこで「酸に強い」という清酒酵母の性質を利用し、タンク内を乳酸によって酸性に保って雑菌を抑え、酵母の増殖を促すわけです。つまり、無防備な状態の酒母をガードしてくれるのが乳酸なんですね。
速醸酛と生酛の違いは、タンク内を酸性に保ってくれる乳酸をどのように酒母に取り入れるか? という点にあります。ここからは、伝統的な製法である生酛、そして生酛系の弱点を克服するべく開発された速醸の順でそれぞれ解説していきます。
「生酛」とは、わが国伝来の世界に類例を見ない酒母造りの製法です。明治末期に速醸酛が開発されるまで、日本酒はすべてこの生酛によって造られていました。
生酛では、酒蔵に生息する天然の乳酸菌を取り込みます。そうして生成された乳酸を増やして酒母を酸性にし、酵母を育てる製法です。
天然の乳酸菌に協力してもらうため、腰のすわった野性味が出せるという良さがある反面、酒母ができるまでおよそ1ヶ月間という期間を必要とします。
さらに、生酛で酒母を仕込んでいる間のタンクの中は、乳酸菌が増えるまで無防備な状態であるという弱点があります。環境によっては乳酸が増える前に雑菌が増えてしまうため、結果的にせっかく仕込んだお酒が売り物にならない腐造になってしまうというリスクを抱えています。それを防ぐには綿密な管理が必要になります。
ちなみに、この生酛から派生した製法として「山卸廃止酛仕込み(やまおろしはいしもとじこみ)」があります。「山廃仕込み」や「山廃」という通称で浸透しており、ラベルにもよく記載されているので見たことがあるかもしれません。生酛ならではの野趣溢れる味わいも引き継いでいる製法です。
そして、生酛での酒造りによって酒蔵が悩まされてきた腐造を防ぐために開発されたのが、これからご紹介する速醸酛です。
「速醸酛」は、明治末期の1910年、醸造試験所の開発により誕生しました。あまりにもポピュラーであるゆえに日頃はそれほど意識されませんが、実は酒造りの世界に革命をもたらしたと言っても過言ではない製法です。
速醸酛の特徴として、酒母の仕込み当初に醸造用乳酸を加える点が挙げられます。生酛と異なり最初から乳酸を投入することにより、雑菌の侵入を防げる安定した酸性の環境になるため、腐造のリスクを軽減することができます。気温などの外部環境の影響を大きく受けることなく、一定の品質の酒母を造れるのです。
また、乳酸菌が乳酸を造ってくれるのを待つ必要がないことから、速醸酛で酒母を造るのにかかる時間は生酛と比べて約半分の15日程度です。
つまり速醸酛の誕生によって、腐造のリスクや管理の負担が軽くなり、質の高い酒が効率的に造れるようになったのです。
ちなみに、速醸酛は速醸系酒母の一種で、この他に高温糖化酒母や希薄酒母などがあります。いずれも速醸酛と同様な酒質になります。
力強さを感じる生酛系の酒に比べると、速醸系酒母で造られた酒は一般的に香りが立ちやすく、さっぱりとした淡麗な味わいになりやすいと言われています。
ただし日本酒は多くの要素が複雑に関わって構成されるため、速醸系酒母で造られた酒のすべてが当てはまる特徴とは言い切れません。現在流通している日本酒のほとんどが速醸系酒母で造られていることから分かる通り、同じ速醸系酒母による酒でも味わいは甘口から辛口、香りは爽やかなものやふくよかなもの、濃醇なものまで多彩で、おすすめの飲み方も様々です。
日本酒がここまで多種多様であるのは、管理の負担や腐造の恐れが少ない速醸系酒母という製法の確立によって、造り手は新たな挑戦ができるようになったからなのかもしれませんね。
速醸系酒母によって造られている「久保田 千寿」は、綺麗ですっきりとした淡麗な味わい、穏やかな香りに仕上げた、いつもの食卓を少し特別にする「食事と楽しむ吟醸酒」です。喉をさらっと通るキレの中に、米本来の旨味と酸味とともに、ほのかな余韻や甘味が感じられます。
濃い味のものからさっぱりとしたものまで、どんな料理にも寄り添い味を引き立てる万能選手なので、冷蔵庫に置いておくと便利な一本です。
久保田 千寿
1,800ml 2,430円(税込2,673円)
720ml 1,080円(税込1,188円)
300ml 500円(税込550円)
※商品の価格は2022年2月10日現在のものです。
あえて意識する機会が少なく、「生酛じゃない方」と思われがちな速醸酛ですが、実は日本酒の世界を大きく変えた発明でした。もし速醸酛が誕生していなかったとしたら、現在の日本酒界は全く異なった様相を呈していたかもしれません。そんな風に思いを巡らせながら一度味わってみてくださいね。