「乾貨」の滋味とともに 中華料理と日本酒のペアリングディナー
2023.12.20

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「乾貨」の滋味とともに 中華料理と日本酒のペアリングディナー

日本酒「久保田」に合わせたコースを堪能できる企画「旅する日本酒ペアリング~世界の料理と久保田~」の4回目、中華料理の会が開催されました。餃子や炒め物など、ちょっとした一品と日本酒を合わせたことはあっても、「最初から最後まですべて日本酒」というフルコースを体験することはなかなかありません。前菜からデザートまでを日本酒で楽しむ、特別なペアリングディナーの様子をお伝えします。

目次

  1. 「旅する日本酒ペアリング~世界の料理と久保田~」in トゥーランドット臥龍居
  2. 凝縮された旨味と日本酒の出会い
  3. 中華料理に合う「純米吟醸」「純米大吟醸」たち

「旅する日本酒ペアリング~世界の料理と久保田~」in トゥーランドット臥龍居

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今回の「旅する日本酒ペアリング~世界の料理と久保田~」は、東京・赤坂にある「トゥーランドット臥龍居」で行われました。いわずと知れた鉄人・脇屋友詞シェフ率いる中華の名店です。12月に入り、赤坂の街は一層にぎやかな雰囲気ですが、一歩店内に入るとぐっとシックなしつらえ。竹林を配した庭もおもむきのあるロケーションで、期待が静かに高まります。

凝縮された旨味と日本酒の出会い

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瑞雲寶白菜 × 「久保田 スパークリング」

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スタートは「久保田 スパークリング」での乾杯から。これに合わせて提供されたのが「瑞雲寶白菜 塩豚肉、とろとろ白菜と白子の煎り焼き」です。
低温の油でゆっくり水分を飛ばしたという白菜を、イベリコ豚と特製のスープで蒸しあげ、さらに鱈の白子がのせられた一品。とろとろ熱々の白菜と、スパークリングの冷たさとが出会い、味わいの輪郭がキリッと際立ちます。ねっとりとした白子に対し、泡がはずむような感覚。スパークリングの持つ甘さと白菜の甘み、そこにスープのコクが溶けて重なっていきます。

九種美彩碟 × 「久保田 千寿 純米吟醸」「久保田 萬寿」

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次に運ばれてきたのは、前菜の盛り合わせ「九種美彩碟 Wakiya 九つの喜び! 乾貨の味わい」。9種の小皿が美しく並べられ、各テーブルから思わず歓声が上がります。グラスには「久保田 千寿 純米吟醸」と「久保田 萬寿」が注がれました。

「乾貨」とは、中国語で乾物のこと。読んで字のごとく、現地では実際に貨幣の代わりとして取引されることもあるといいます。統括料理長の小澤善文シェフからは、この乾貨の風味こそが中華料理と日本酒との出会いのキーポイントになる、と説明がありました。ホタテやナマコ、椎茸などを干して凝縮させた旨味を、それぞれの料理にふんだんに盛り込み、今回はその豊かな「だし」と日本酒とを共鳴させようという趣向です。

味わってみると、干し穴子の白酒蒸しや胡麻油をきかせたクラゲの冷菜など、海由来のさっぱりとした前菜には、繊細なミネラル感を持つ「久保田 千寿 純米吟醸」が好相性。他方、牛レバーの蜂蜜オレンジ炒めや、叉焼などのこっくりとした前菜には、「久保田 萬寿」のボディーのある華やかさがぴったりです。しかもオレンジの香りや蜂蜜の甘さには、萬寿の持つ隠れたフルーティーさをそっと呼び起こす力があるように感じます。

二吃鮮龍蝦 × 「久保田 萬寿 自社酵母仕込」

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続いて、「二吃鮮龍蝦 活オマール海老のチリソースとマヨネーズ和え」が運ばれます。海老のチリソース、海老マヨネーズといえば中華のコースでは定番の一品ですが、さすがは名店。ぜいたくなオマール海老を使い、洗練された味わいです。
チリソースにはオマールの海老みそが入りぐっとコクのある味わいですが、ほんのりと柑橘の存在もある複雑な香味。対して、マヨネーズソースには米麹や酒粕、豆乳が入り、ミルキーながら軽やかなソースとなっています。

この一皿にぴったりなのが「久保田 萬寿 自社酵母仕込」。上品で力強く、しかも華もある自社酵母仕込は、甲殻類だけが持つ特徴的な香り、まろやかな旨味を存分に引き立たせてくれます。方向性の異なる二つのソースに、あえてしっかりとした主張のある日本酒を組み合わせることで、互いの味の厚みをじっくりと感じさせるペアリングとなっています。

南乳東坡肉 × 「久保田 純米大吟醸」

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4皿目は「南乳東坡肉 皮付き豚肉のとろとろ煮込み 紅南乳の香り」。紅南乳とは、豆腐の水分を抜き、塩と紅麹を加えて発酵させた中国の調味料です。ともに供されたのは「久保田 純米大吟醸」。フルーティー、かつボディーもあるお酒ですが、すっと優雅なキレもある一杯です。

東坡肉(トンポーロー)は、とろりとした豚の脂と甘みの強さが特徴的な料理です。力強い後味に、大吟醸のキレがつややかに響きます。このペアリングの「裏テーマ」は、実は「味わいの再構築」。現代的な味わいの大吟醸と東坡肉、つまり中華のトラディショナルな味わいに久保田の新しい伝統とを組み合わせ、味の発見を生み出そうというチャレンジです。結果、独特の発酵の風味も加わった奥行きのある料理に対し、後からするっと追いかけるような大吟醸の優雅さ。はっとするような両者の新鮮な出会いで口内調味が完成する、すてきなペアリングとなりました。

蟹黄魚翅飯 × 「久保田 碧寿」

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次の「蟹黄魚翅飯 上海蟹とふかひれのお月見仕立て」は、この時期に一番美味しくなるという上海蟹にふかひれの餡を合わせ、さらに紹興酒漬けにした卵黄をのせるというスペシャルなごはんです。ある意味、「究極の中華丼」と言えるかもしれません。

このパワー全開の旨味を、山廃仕込みで久保田最強のボディーを誇る「久保田 碧寿」が、しっかりと受け止めてくれます。蟹の香りと、とろりとした餡とで心が満たされたところに、碧寿を一口。とても心地よく、優しい余韻が残ります。碧寿は、一口でそれとわかる旨味の「芯の強さ」で評価されることが多いかと思いますが、合わせる料理次第では、こんな新たな一面を見せてくれるようです。

臥龍居氷淇 × 「久保田 ゆずリキュール」

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今夜の締めくくりは「臥龍居氷淇 Wakiya特製デザート」。グラスに入ったクリーミーな杏仁豆腐と胡麻団子の二つが並びます。これに合わせ、なんと燗づけされた「久保田 ゆずリキュール」がめいめいの平盃に注がれました。果実のリキュールを温めるという珍しい試みに、驚きの声もあちこちで上がります。55度に燗づけし、手元で約45度となるように緻密に計算されています。
杏仁の香りに、温められて立ち上った柚子の香りがふわりと見事に溶け合います。香ばしさのあるゴマと柚子の組み合わせにも、心がほぐれるようです。

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会の途中には脇屋シェフにもご登場いただき、会場は大いに盛り上がりました。すてきなご挨拶をいただいたほか、写真撮影にも気さくに応じていただくなど、終始なごやかなムードの会となりました。

中華料理に合う「純米吟醸」「純米大吟醸」たち

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今回の会では、中華料理の奥深さ、そして日本酒を受け入れてくれる「懐の広さ」をじっくり堪能できました。おだやかに料理を方向付けるようなスパイス使い、多種多様な調理法、そして乾貨。日本料理にも通じるような「乾物のだし」は、油や塩味に頼らない、滋味深い味わいを生み出していました。これらの要素に対し、パワフルさや切れ味の良さが特長の久保田の「純米吟醸」「純米大吟醸」たちが特に活躍してくれたように感じています。

次回の「旅」はイタリア料理です。日本人にとってなじみ深い料理の数々、「どうやって日本酒と合わせるのだろう」とお思いになるかもしれません。しかし、未知なる旅路にこそ、新しい発見があるというもの。どうぞご期待ください。

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佐藤 厚一郎

佐藤 厚一郎

酒匠。JSA SAKE DIPLOMA認定。 お燗を愛し、日本酒を愛し、世界中の食にSAKEをコネクトする、その「深い愛」こそが誇り。本企画では監修を担当。日本ガストロノミー協会理事。