香りを引き出す吟醸造りとは?製法やおすすめの吟醸酒も紹介
甘くさわやかな香りが特徴の吟醸酒は、上品なイメージのある日本酒です。吟醸酒は「吟醸造り」という製法で造られていますが、飲んだことがあっても詳しくは知らないという人も多いのではないでしょうか。この記事では、素材や製造方法などを吟味しておいしい日本酒を造り出す「吟醸造り」について詳しくご紹介していきます。
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「大吟醸とは一体どんな日本酒なのか知りたい」「大吟醸のおすすめ銘柄を知りたい」こんな疑問をお持ちの方も多いと思います。日本酒には様々な種類があり、大吟醸とは特定名称酒に分類される日本酒の一つです。この記事では、大吟醸とはどういうお酒か、吟醸との違いや味わい・香りの特徴から、大吟醸の美味しい飲み方やおすすめの銘柄まで紹介します。
目次
日本酒は米の精米歩合や製造方法によって8種類の「特定名称酒」に分類されます。大吟醸はその中の一つ。まずは、大吟醸がどういうお酒のことを指すのかを紹介します。
国税庁では、大吟醸酒は「吟醸酒のうち、精米歩合が50%以下の白米を原料として製造し、固有の香味及び色沢が特に良好な清酒」と定義されています。ちなみに、吟醸酒は、「精米歩合60%以下の白米、米こうじ及び水、又はこれらと醸造アルコールを原料とし、吟醸造りした酒で、固有の香味及び色沢が良好な清酒」となります。
つまり、精米歩合が50%以下の白米を原料とし、醸造アルコールを添加した吟醸造りしたお酒が大吟醸となります。
吟醸は、精米歩合が60%以下の白米を原料とし、醸造アルコールを添加した吟醸造りしたお酒なので、大吟醸との違いは精米歩合となります。
精米歩合とは、玄米を外側から削り残った割合を%で示したものです。例えば、精米歩合が60%の日本酒なら、玄米を表面から40%削り取った状態の米を使って造られた日本酒です。つまり、大吟醸の方が50%以上削り取った状態の米、つまりよく磨かれた米を使っていることがわかります。
磨きによって米の表層部分を削ることにより、雑味のない日本酒特有の香り良い酒を造ることができます。そのため、一般的には吟醸よりも大吟醸の方が、より日本酒の雑味が少なくなり、クリアな味わいになる傾向があります。
大吟醸と純米大吟醸の違いは、精米歩合50%以下という条件は同じですが、醸造アルコールを含むか含まないかの違いです。
米、米麹、水のみで造られた純米大吟醸は、米本来の旨味やコクが特徴。一方、醸造アルコールを加えた大吟醸は、すっきりとした飲み口のものが多く、味のバランスが良いので飲みやすいのが特徴です。
フルーティーで香り高い大吟醸。すっきりとした味わいで飲みやすく、どんな料理にも合うといわれているので、家族や親族が集まるタイミング、ハレの日など、特別な日には用意しておきたいお酒です。味わい深い、おすすめの大吟醸を2つ紹介します。
・朝日山 萬寿盃
・久保田 翠寿
※こちらの記事内で紹介した商品の価格は2023年6月13日現在のものです。
新潟で昔から愛されている「朝日山」の中でも、「ハレの日の乾杯酒」をイメージした大吟醸。
華やかな香りと、やわらかく広がる味わいが特徴です。軽く冷やして、もしくは常温で飲むのがおすすめ。お酒本来の味わいをゆっくり楽しめる一品です。大吟醸の上品な香りで特別な日に彩りを添えてお楽しみください。
朝日山 萬寿盃
1,800ml 5,118円(税込5,629円)
720ml 2,337円(税込2,570円)
日本酒の「久保田」の中でも、唯一の大吟醸、しかも火入れをせずに低温で貯蔵した大吟醸の生酒です。
日本酒本来の瑞々しさやフレッシュさを感じ、華やかで上品な香りの後に訪れる心地よいキレが、くせになる味わいです。しっかり冷やして、冷酒で飲むのがおすすめです。
※4月から9月までの限定出荷の商品です。
久保田 翠寿
720ml 3,027円(税込3,329円)
大吟醸や吟醸は、吟醸造りという製法で造られます。
吟醸造りとは、吟味して醸造することをいい、伝統的に、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟香)を有するように醸造することです。これによって吟醸造りならではのフルーティーな香り、「吟醸香」が生まれるのです。
吟醸香は吟醸造りの大きな特徴であり、大きく2種類の香りに分けられます。それぞれの香りの特徴と、香りの違いが生まれる理由を確認しておきましょう。
まずは、リンゴやナシ、パイナップルといった甘酸っぱく、みずみずしいフルーツの香り。この香りはカプロン酸エチルという成分から生まれます。
カプロン酸エチルは、酵母の脂肪酸合成とアルコール発酵が関連して生成される香り成分です。この香り成分を造り出すのが得意な酵母によって、フルーティーな香りの日本酒が造られるようになりました。
この香りを持つ大吟醸は、食前酒としてもおすすめ。フルーティーでくせの少ないすっきりとした味わいは、日本酒が初めてという人でもチャレンジしやすいですよ。
一方、バナナやメロンのような、おだやかで奥深い香りを持つものもあります。先ほどのリンゴやナシなどの吟醸香に比べるとやや甘味が増す香りのため、若い女性に人気です。この香りは、酢酸イソアミルという成分の香りによるものです。
米のたんぱく質からできるアミノ酸の酵母による代謝を起点として作り出される香り成分、酢酸イソアミル。精米歩合の数値が小さくなるにつれて、米の表面にある酢酸イソアミルの生成を抑制する脂肪酸が減っていくため、総じて酢酸イソアミルによる香りの高い日本酒が造られやすくなります。
この香りを持つ大吟醸は、芳醇な香りが口の中に広がり、旨味が強く深い味わいに。料理と一緒に楽しむのもおすすめです。
こちらの記事では、吟醸香をより楽しむ方法や魅力について紹介しています。
吟醸香をもっと知りたい方はこちらの記事もぜひご覧ください。
大吟醸の味わいは、酒蔵によって米や酵母、造りも違うため一概には説明できませんが、一般的な傾向としては雑味が少なくすっきりと滑らかな飲み口となります。
醸造アルコールを添加しているため、すっきりとした軽快な酒質になり、吟醸造りによる華やかでフルーティーな香りがより引き立ちます。
醸造アルコールを添加していない純米大吟醸は、より米らしい旨味やコクを感じるお酒が多い傾向にあります。
大吟醸をもっと楽しむなら、飲み方にもこだわりを持ってみましょう。本来の旨味や香りを引き出す飲み方は、酒の席の話のタネとして知っておいて損はありません。
同じ銘柄でも、温度によって味の感じ方が変わるのが日本酒の醍醐味。一般的に、人間の体温に近い35℃くらいに温めると甘味を強く感じ、50℃以上まで温めると甘味を感じにくく、辛口になるといわれています。銘柄によっておすすめの温度があるので、目安として確認しておくと良いでしょう。ただし、温度はあくまでも目安。さまざまな温度を試してみることで、自分好みの味に出会えるかもしれません。
大吟醸を飲むなら、まずは常温で本来の旨味と香りを楽しみましょう。冷酒にする場合は、約7~10℃がすっきりと飲みやすくおすすめ。冷やし過ぎると大吟醸特有のフルーティーな香りが控えめになってしまうので注意しましょう。
燗酒の場合は、30℃前後の日向燗は温かくも冷たくもなく、なめらかな味わいに。35℃前後の人肌燗だと、米麹の香りが引き立ちます。ぬる燗は40℃前後で、豊かな香りが広がります。45℃前後の上燗は、引き締まった香りと味わいを楽しめるのが特徴です。
50℃前後の熱燗にすると、味と香りがシャープになるので、キレのある辛口がお好みの方におすすめです。55℃以上の飛び切り燗だと、さらに辛口になります。
大吟醸は、温度によって香りや味わいの感じ方に変化が生まれます。目安の温度にとらわれすぎず、飲みながら自分の好みの温度を見つけていくのも楽しいですね。ぜひ、季節にあわせて温度の変化も取り入れてみてください。
フルーティーで香り高い日本酒である大吟醸は、雑味が少なく、すっきりとした味が魅力。香りと味のバランスが良く、料理やおつまみと合わせて楽しむのがおすすめです。夏は冷酒、冬は燗酒など、季節によって温度を調整して、好みの味わいを探してみてください。