香りを引き出す吟醸造りとは?製法やおすすめの吟醸酒も紹介
甘くさわやかな香りが特徴の吟醸酒は、上品なイメージのある日本酒です。吟醸酒は「吟醸造り」という製法で造られていますが、飲んだことがあっても詳しくは知らないという人も多いのではないでしょうか。この記事では、素材や製造方法などを吟味しておいしい日本酒を造り出す「吟醸造り」について詳しくご紹介していきます。
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吟醸酒の「吟醸」とは、原料を吟味して醸すという意味があります。数ある日本酒の中で「吟醸造り」という特徴的な製法を用いる吟醸酒は、いったいどんなお酒なのでしょうか。本記事では、吟醸酒の要件や純米酒や本醸造酒との違い、適切な保存方法などを紹介します。吟醸酒の特徴や味わい方を知り、奥深い日本酒の世界をより楽しみましょう。
目次
他の日本酒との違いを知るには、まずは吟醸酒がどんなお酒かを理解することが大切です。ここでは、吟醸酒につけられた「吟醸」という言葉の意味や、吟醸酒の要件を解説します。
「吟醸」という言葉は、早くても明治維新以降から使われはじめた言葉だと考えられています。「吟醸酒」は元々、酒蔵の技術を向上させるための研究や記録を目的とする鑑評会や品評会への出品酒として始まりました。現在は「吟醸酒」が中心の全国清酒品評会ですが、始まった1907年当初は、経済性を意識した濃い味で旨味のある「醇良酒」が中心でした。
1933年に竪型精米機が登場すると、精米技術の向上により香りの高いお酒を造れるようになり、さらに吟醸造りに適した酵母が見いだされ、吟醸酒の品質が向上していきました。1982年には吟醸酒ブームが起き、世間に「吟醸酒」という言葉が広がりました。現在では、香り高い日本酒として広く楽しまれています。
吟醸酒に用いられるのは、「吟醸造り」という製法です。国税庁のホームページでは「吟醸造りとは、吟味して醸造することをいい、伝統的に、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟香)を有するように醸造すること」と記されています。
原料となる米や米麹、造り方を、それぞれの蔵元が吟味して造るため、蔵元や商品によって味や香りの違う吟醸酒が誕生します。吟醸造りに明確な条件などはありませんが、「吟味して醸造する」という定義をもとに、酒造りの全てにこだわりを持って造られるのが吟醸造りです。
吟醸造りの定義である「吟味して醸造する」とは、何をどのように吟味して醸造するのでしょうか。
まず、日本酒の原料となる米は、私達が食べている飯米とは違い、「酒米」と呼ばれる専用の米が広く使われています。酒米の品質は日本酒の旨味や香りを大きく左右するため、使用する米へのこだわりは並々ならぬものがあります。
吟醸酒に分類される日本酒は、その米を精米歩合60%以下にすることが定められています。
「精米歩合」とは、玄米を削り残った割合を%で示したもの。例えば、精米歩合が60%だと、玄米を外側から40%削り取った状態のことです。なお精米歩合が50%以下になると「大吟醸酒」に分類されます。
吟醸造りの定義の中に、「特有な芳香(吟香)を有するように醸造する」とあります。吟醸酒の最大の特徴となる独特の香りを生み出す素になるのが「酵母」です。
吟醸造りの定義には、どの酵母を使わなければならないという規定はありません。そのため、蔵元が選ぶ酵母によって、香りの強さや質がそれぞれ異なります。同じ吟醸酒でも飲んでみるまで分からないのも吟醸酒の魅力です。
日本酒には吟醸酒の他にも純米酒、本醸造酒などの種類があります。それぞれの違いを知るために、吟醸酒と他のお酒の違いを紹介します。
日本酒は、原料や製法など所定の要件を満たした「特定名称酒」があります。特定名称酒は大きくは「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」の3種類に分けられ、原料や製造方法などの違いによって、さらに8種類に分類されます。特定名称酒に含まれない日本酒は、「普通酒」または「一般酒」などと呼ばれます。
次に、吟醸酒と純米酒の違いについて解説していきましょう。
純米酒とは、米・米麹・水のみを原料としています。米本来の旨味や深いコクを楽しめる日本酒です。8種類の特定名称酒の中の「吟醸酒」や「大吟醸酒」との違いは、醸造アルコールが原料に含まれるかどうかです。
ちなみに、純米酒と吟醸酒、どちらの要件も満たし、両方の特徴を併せもった日本酒は、「純米吟醸酒」と「純米大吟醸酒」に分類されます。
本醸造酒は、原料に醸造アルコールを含みます。本醸造酒の場合、醸造アルコールの使用量は、原料に用いる酒米の総重量の10%未満までに制限されています。すっきりとした味わいの辛口タイプのお酒が多いのが特徴です。
吟醸酒と本醸造酒の違いは、「吟醸造りかどうか」と「精米歩合」です。吟醸酒の精米歩合は60%以下ですが、本醸造酒は70%以下と定められています。
吟醸酒は常温で飲んでも美味しいお酒ですが、飲み方や料理にもこだわると、よりお酒の美味しさを感じられると言われています。吟醸酒の美味しい飲み方と、吟醸酒に合う料理やおつまみを紹介します。
吟醸酒は幅広い飲み方ができるお酒ですが、特徴的な吟醸香を楽しむには、特に冷酒がぴったりと言われています。一般的に吟醸酒の適温は8℃から12℃とされていますが、温度によって日本酒の呼び名が変わります。それぞれの味わいの違いを比較しながら、楽しんでみてはいかがでしょうか。
・花冷え(10℃前後)
「花さえ冷たくなる温度の日本酒」で、10℃前後を「花冷え」と呼びます。香りは穏やかに、味わいがシャープになります。冷蔵庫でしっかりと冷やした状態が目安の温度です。
・涼冷え(15℃前後)
「涼やかな冷たさを感じる日本酒」で、15℃前後を「涼冷え」と呼びます。吟醸酒の華やかな香りが引き立ちます。冷蔵庫から取り出してしばらく経った頃が目安の温度です。
吟醸酒には素材本来の味を楽しめる、あっさりした料理がよく合います。
白身魚、貝、山菜などの素材を「刺し身」「蒸し物」「おひたし」などの調理でいただくと、吟醸酒にぴったりです。代表的なところでは、白身魚の刺し身やカルパッチョ、山菜のおひたしなどがおすすめです。
日本酒は賞味期限の表記がありません。ただし、日本酒は賞味期限の代わりに製造年月を記載することが義務付けられています。製造年月とは、日本酒が容器に詰められた日のこと。その製造年月を目安に、大体の賞味期限を知ることが可能です。
日本酒は日光や高温の影響で味が変わると言っても過言ではありません、紫外線が当たらない冷暗所で保存することが大前提です。適切な場所で保存された未開栓の日本酒の場合だと、製造年月から約半年~1年程度は美味しく飲むことができるとされています。
しかし一度開栓すると、熟成が進みやすくなり、味わいが変化する可能性が高くなります。開栓済みの日本酒の場合は、約2週間を目安に早めに飲み切ってしまいましょう。
早く飲み終わるのが難しい場合は、冷蔵庫での保存がおすすめです。特に生詰酒や生酒、大吟醸酒などは、冷蔵庫での保存が基本。常温より冷蔵庫で保存することで、品質の変化のスピードを緩め、味わいや香りを維持しやすくなります。熟成のスピードをより緩やかにしたい場合は、冷蔵庫の温度を低めに設定しましょう。
※こちらの記事内で紹介した商品の価格は2020年8月8日現在のものです。
1985年に誕生した、久保田の原点となる淡麗辛口の代名詞。
「久保田 千寿」は、辛口でありながら、まろやかさを感じさせる味わいが特長です。
誕生から35年の時を経て、2020年4月にクオリティアップしました。
綺麗ですっきりとした淡麗な味わいはそのままに、さらなる「食事と合うすっきりとした味わい」を追求し、味わいの幅も生み出しました。料理の味を邪魔することなく、四季折々の素材が持つ味と香りを引き立てます。
久保田 千寿
1,800ml 2,430円(税込2,673円)
720ml 1,080円(税込1,188円)
300ml 500円(税込550円)
<2020年9月1日(火)より季節限定で出荷>
冬に仕込んだ「久保田 千寿」の原酒を秋まで約8ヵ月じっくり熟成させた、今年発売の新商品「久保田 千寿 秋あがり」。
生原酒ならではの濃厚な味わいが、火入れ後の熟成によってまろやかな味わいへと変化しています。
冷やすと、千寿ならではのキレとやわらかな酸味を、常温でとろっとした口当たりと旨味をお楽しみいただけます。味わい深いため、お酒をメインにじっくり楽しむのはもちろん、秋に旬を迎える茄子やさつまいもなどの野菜や、秋鮭をはじめとした上品な旨味のある魚介類や肉類とも相性のよいお酒です。
久保田 千寿 秋あがり
720ml 1,450円(税込1,595円)
吟醸酒は、吟味を重ねた素材を、じっくり時間をかけて発酵させて造ったお酒です。フルーティーな吟醸香を存分に楽しめるよう、飲み方にこだわったり丁寧に保管したりして、自宅でも気軽に吟醸酒を楽しんでください。