「煎り酒」とは?室町時代から続く万能調味料のレシピと活用法
2023.05.31

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「煎り酒」とは?室町時代から続く万能調味料のレシピと活用法

古くから日本では、醤油や味噌、みりんといった日本ならではの調味料によって、和食に始まる日本独自の食文化が発展してきました。今回紹介する煎り酒は、室町時代から続く万能調味料です。この記事では、煎り酒の基本情報に加え、自宅で作れる煎り酒の簡単レシピや活用方法を紹介します。

目次

  1. 煎り酒とは
    1. 「煎り酒」の意味
    2. 「煎り酒」の歴史
  2. 煎り酒の魅力
    1. ①少ない塩分
    2. ②出汁のうま味
    3. ③疲労回復
  3. 煎り酒の簡単レシピ
  4. 煎り酒の活用法
    1. ①刺身やおひたし、煮物などの和食に
    2. ②焼き魚やお肉の下味に
    3. ③和風パスタとして
  5. 食卓の楽しみ方を広げてくれる煎り酒

煎り酒とは

煎り酒

あまり聞き馴染みのない「煎り酒(いりざけ)」とは、一体どんなものなのでしょうか。まずは煎り酒の意味や歴史といった基本情報をお伝えします。

「煎り酒」の意味

「煎り酒」とは、読んで字のごとく煎ったお酒のこと。酒という文字がついていますが、飲むためのお酒ではなく、みりんのようにあくまでも調味料の一種です。

作り方はいたって簡単で、鰹節と梅を日本酒に入れて煮詰めるだけ。煮詰めた日本酒のうま味をベースに、さっぱりとした梅の酸味と出汁の効いた味わいが特徴です。さっぱりとした味わいはポン酢として、出汁の効いた味わいはめんつゆとして、さらにご飯や刺身には醤油としても使える、まさに万能調味料なのです。

「煎り酒」の歴史

煎り酒の歴史は古く、発祥は室町時代後期。当時はまだ高価だった醤油の代わりとして、一般家庭に広まっていきました。その後、江戸時代中期まで広く用いられた煎り酒ですが、煎り酒よりも保存性の高い醤油の価格が値下がりするにつれて、煎り酒の活躍は少しずつ減少。現在のように醤油が食卓の中心となっていきました。

今日、一般家庭で煎り酒を調味料として使用することはほとんどありません。しかし昨今では、煎り酒に含まれる塩分が醤油よりも少なく、かつ醤油のように使用できるとあり、ヘルシーな万能調味料として再注目されています。自宅で簡単に作ることができるのも、煎り酒の魅力の一つです。

ちなみに、大手メーカーを中心に煎り酒が販売されているので、気になる方はチェックしてみてください。

煎り酒の魅力

人気を集めている煎り酒には、どんな魅力があるのでしょうか。煎り酒の秘密に迫ります。

①少ない塩分

やはり煎り酒の魅力といえば、塩分が少ないこと。醤油大さじ1に含まれる塩分は約2.6g、一方で煎り酒大さじ1に含まれる塩分は約0.2gという一目瞭然の結果が出ています。

厚生労働省より発表された「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、一日あたりの食塩摂取量の目標値は、男性が7.5g未満、女性が6.5g未満です。つまり、一日あたり醤油大さじ3杯摂取してしまうと、男女ともに目標値を超えてしまうことになります。一方、煎り酒にはほとんど塩分が含まれていないので、目標値を超えることなく、かつ塩分を摂りすぎることもありません。

②出汁のうま味

出汁の凝縮したうま味を楽しめるのも、煎り酒の魅力の一つです。煎り酒に含まれている鰹節には、うま味成分であるイノシン酸が豊富に含まれており、素材の味を引きたててくれる効果もあります。

煎り酒は日本酒で鰹節をしっかりと煮込むことで、このうま味成分をギュッと凝縮。煎り酒の特徴である出汁のうま味をしっかりと引き立たせ、万能調味料としてさまざまな調理シーンに役立ちます。

③疲労回復

実は、日本酒と鰹節、梅干しを原料とする煎り酒を摂取するだけで疲労回復の効果が期待できます。日本酒と鰹節に含まれる必須アミノ酸はエネルギーとして機能するだけでなく、筋肉や骨、皮膚、爪、髪、血液など人間を形成する役割を担っています。

また、梅干しに含まれるクエン酸には疲労回復の原因となる乳酸を身体の外へ排出してくれる機能があり、疲労回復に期待できるのです。

煎り酒の簡単レシピ

煎り酒 作り方

煎り酒は、市販の日本酒に鰹節と梅干しを加え煮詰めるだけで完成するお手軽調味料でもあります。ご自宅にある材料であっという間にできるので、「健康な食事を摂りたい」「塩分を控えめにしたい」という方は、ぜひマイ煎り酒を作ってみてください。

【材料】
・日本酒:200ml
・梅干し:大1個
・鰹節:1.25g
・塩:少々
(お好みで昆布)

【作り方】
①日本酒に梅干しと塩、お好みで昆布を入れて中火にかける。日本酒が半分になるまで煮詰めるのがポイント。
②鰹節を加えたら、火を弱めて5~6分ほど煮詰める。
③粗熱をとり、キッチンペーパーや布で煎り酒をこせば完成。

冷蔵保存で、2~3週間ほど楽しめます。ここで使用する日本酒は、必須アミノ酸含有量が多い純米酒がおすすめです。また、精米歩合が高い日本酒を選ぶのもよいでしょう。

煎り酒の活用法

煎り酒 煮物

やはり煎り酒の魅力といえば、醤油の代わりとして使用できること。日本人にとって、醤油は毎日の食事に欠かせない調味料です。醤油の代わりに塩分が少ない煎り酒を使用することで、健康的な食事を摂ることができます。ここでは、煎り酒をおいしく活用できる方法を3つ紹介します。

①刺身やおひたし、煮物などの和食に

日本酒と鰹節、梅干しを原料とする煎り酒は、もちろん和食にぴったり。寿司や刺身といった魚介類から、素材を楽しむおひたし、野菜をたっぷりと煮込んだ煮物まで、さまざまな調理シーンで活躍します。

煎り酒を醤油の代わりと考えれば、どんな和食にも使えそうですね。

②焼き魚やお肉の下味に

煎り酒は調味料として料理の味わいを決めるだけでなく、料理の下味にも役立ちます。出汁のうま味が効いた煎り酒に魚やお肉をひたすことで、口に入れた瞬間ふわっと出汁の香りが漂うおかずに大変身!マンネリしがちの食卓に、煎り酒はいつもと違うアクセントをつけてくれます。

③和風パスタとして

和風パスタの調味料として、煎り酒を使用するのもおすすめ。ボロネーゼやミートソースのような洋風には出せない、出汁の効いた味わいが広がります。

納豆と一緒に加えた「出汁の効いた納豆パスタ」や、キノコとツナを加え煎り酒でアクセントをつけた「煎り酒でキノコとツナの和風パスタ」など、煎り酒とパスタの相性は抜群です。醤油やめんつゆの代わりに煎り酒を加えるだけなので、使いやすいのも魅力です。

食卓の楽しみ方を広げてくれる煎り酒

室町時代から今日まで続く煎り酒。当時の人々が愛していた万能調味料を、今日生きる私たちも味わうことができるなんて、ロマンがありますね。

いつもの食卓に、少し変化を。煎り酒は自宅で簡単に手作りすることができるので、食卓の楽しみ方を一つ増やしてみてはいかがでしょうか。