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常に進化する美味しさを求めて 杜氏が込めた「久保田 千寿」への想い
2020.03.31

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常に進化する美味しさを求めて 杜氏が込めた「久保田 千寿」への想い

1985年に誕生した「久保田 千寿」が、2020年4月、クオリティアップして発売されます。特長である“深みのある味わいと香りの調和”をどのように追求したのか。造り手の杜氏が、進化する美味しさの秘密を語ります。

目次

  1. 「久保田」のブランドリニューアルへ
  2. 時代の変化を読み取り、挑戦を重ねて生まれた「久保田」
  3. 「常に進化する美味しさ」を求めて
  4. 久保田の原点である「久保田 千寿」
  5. “食事と合うすっきりとした味わい”を追求した『久保田 千寿』
  6. これからも美味しさに挑戦しつづける

「久保田」のブランドリニューアルへ

久保田 千寿

クオリティアップした「久保田 千寿」

朝日酒造は、2020年5月に会社創立100周年、そして「久保田」発売35周年を迎えます。それにあたり、2019年9月に、「久保田」のブランドリニューアルを発表しました。1985年に誕生し、それまでになかった「淡麗辛口」という日本酒の新たな方向性を確立した「久保田」。新たなブランドメッセージとして「常に進化する美味しさ」を掲げ、伝統と革新の原点に立ち返ります。

リニューアル発表以降、新商品やリニューアル商品を続々と発売。2019年10月に料飲店先行発売の新商品「久保田 千寿 純米吟醸」、2020年1月にリニューアル商品「久保田 千寿 吟醸生原酒」、2020年2月に新商品「久保田 萬寿 無濾過生原酒」を発売しました。

そして、満を持して、2020年4月に「久保田 萬寿」と「久保田 千寿」のクオリティアップ版が発売となります。常に進化する美味しさを目指して、どのような造りの工夫を凝らしてきたのか。造り手の杜氏が、その秘密を語ります。

時代の変化を読み取り、挑戦を重ねて生まれた「久保田」

久保田

1985年5月、「日本酒の失地回復を図り、日本酒を真に文化の香り高い国酒に育て上げる」というミッションのもと、当時の社長の平澤亨と工場長の嶋悌司が生み出したのが「久保田」です。

誕生当時、清酒業界は低価格競争になっており、日本酒離れが危惧されていたため、高品質の日本酒を適切な価格で提供することを使命と考えました。また、都会に生きる日本人の労働の礎が、肉体労働から知的労働へ移り変わっていく姿を見て「淡麗辛口」を志向しました。 仕事が変わり、食卓に並ぶ料理も濃味から薄味へと変わりました。それが酒の味を変えることを、生活者の視点に立ち、見抜いていたのです。
進取の精神で時代の変化を読み取り、挑戦を重ねて生まれた「久保田」は、"淡麗辛口”という日本酒の新たな方向性を確立し、誰もが美味しいと認める日本酒を追求してきました。​

「常に進化する美味しさ」を求めて

ここ最近では、日本酒がブームとなる一方で、お酒離れや日本酒全体の販売数量の減少が続いています。日本酒を今一度飲んでいただくためには、伝統や歴史を重んじながら時代に合わせて進化していく、「伝統と革新の融合」が求められているのです。

「久保田」のブランドリニューアルにあたり、誕生当時の基本理念はそのままに、新たなブランドメッセージ「常に進化する美味しさ」を掲げました。変わりゆく時代とお客様の声に耳を傾け、その声に応えるために常に時代に相応しい挑戦を行い、お客様に納得いただける美味しさを追求・提供し続ける日本酒ブランドを目指しています。

商品は、特別な時を味わうプレミアムラインの「久保田 萬寿」ラインと、いつもの食事をより特別に美味しく味わうデイリーラインの「久保田 千寿」ラインをメインに展開。また、日本酒が初めての方や馴染みのない若年層のお客様にも手にとっていただきやすいように、今後「久保田 純米大吟醸」のパッケージリニューアルを予定しています。さらに、実験的な商品に挑戦していく「KUBOTA LAB(仮称)」ラインも立ち上げます。お客様から評価いただいている美味しさを大切にしながら、新しい美味しさにも挑戦していきます。

久保田の原点である「久保田 千寿」

「久保田」誕生当時の造りの様子

「久保田 千寿」は、1985年、「久保田」として最初に誕生した、まさに久保田の原点です。当時の工場長の嶋悌司が、都会に生きる日本人の労働の礎が、肉体労働から知的労働へ移り変わっていく姿を見て、これからは食事もこってりしたものより、あっさりした食が好まれていくだろうと予見。それに伴い、酒もすっきり飲める「淡麗辛口」にすべき、と考えました。そのために、酒造りを根本的に改善し、その当時としては万人向けではない、綺麗であっさりした辛口でありながら、まろやかさを感じさせる味わいを実現したのです。「久保田 千寿」は、その予見通り、多くのお客様に受け入れられ、今なお愛され続けています。

“食事と合うすっきりとした味わい”を追求した『久保田 千寿』

大橋良策

松籟蔵杜氏の大橋良策

現在、「久保田 千寿」を造っているのは、朝日酒造に2つある蔵のうちの「松籟蔵」です。2011年に竣工した「松籟蔵」は、醸造技術が最大限に発揮できるように設計された蔵です。
松籟蔵で杜氏を務めるのは、大橋良策です。入社以降、一貫して酒造りに携わり、2016年夏より松籟蔵の杜氏を務めています。今年杜氏4年目を迎え、様々な取組みや挑戦が芽を出し始めている時期です。

「今回の『久保田 千寿』のクオリティアップで目指したのは、“食事と合うすっきりとした味わい”の追求です」と大橋は話します。

すっきり感を引き出すのにまず大事なのは、もろみの発酵です。

「もろみは、低温長期発酵で造っていますが、もろみの温度を以前よりも低温で管理しています。酵母の活性をよく観察しながら、低温でじっくりともろみを育てています。そうすることで、より雑味のないすっきり感を引き出すことができています」

もろみの様子を確認する、杜氏の大橋

そのすっきり感を持たせつつ、大橋がこだわったのは余韻です。

「千寿のすっきり感は大事にしつつ、やわらかさを出したい、という想いがありました。そのため、製麹の際、酵素力価が高い麹、つまり糖化力が高い麹造りをしています。そうすることで、綺麗ですっきりとした淡麗な味わいはそのままに、深みやほのかな余韻や甘味も加わり、味わいの幅につながっています」

こうして完成した『久保田 千寿』は、綺麗ですっきりとした淡麗な味わい、穏やかな香り、そして、喉をさらっと通るキレの中に、米本来の旨味と酸味とともに、ほのかな余韻や甘味が感じられるお酒に仕上がっています。

これからも美味しさに挑戦しつづける

一つ一つの挑戦が、徐々に形になって現れ始めた大橋は、自信を胸にこれからの抱負を語ります。

「原料にこだわり、丁寧な造りをする。これは昔から変わりません。そのうえで、これまで『久保田』を好きでいてくださっているお客様、そして、これから『久保田』を飲んでくださる方に新たな選択肢を提示したい。そのために、一肌脱いで頑張りたいと思っています」