酒造り歳時記「甑倒し(こしきだおし)」
2020.05.31

特集

酒造り歳時記「甑倒し(こしきだおし)」

「甑倒し(こしきだおし)」とは、酒造り用語のひとつで、その年の最後のもろみの仕込みを終えることをいいます。

甑

「甑」とは、古くから使われている、日本酒の原料であるお米を蒸すための桶のような蒸し器のことをいいます。もろみの仕込みが終了することで、仕込みに加えるお米を蒸すための甑が不要となり、横に「倒し」て洗って片づけることから、甑倒しの名がきています。

連続蒸米機

連続蒸米機

現在の朝日酒造では、甑ではなく連続蒸米機という機械を使って米を蒸しているので、甑を倒して洗うという行為は行いませんが、今でも、もろみ仕込みを終えた日を甑倒しと呼んでいます。

朝日酒造の今期の酒造りは、松籟蔵は一足早い2019年8月20日から、朝日蔵は9月15日から始まりました。松籟蔵は5月29日に甑倒しを迎え、今期最後の仕込みは「久保田 百寿」。朝日蔵は「久保田 碧寿」で、5月31日に無事に仕込みを終えました。

湯気

ちなみに、蔵の煙突から上がっている煙は、蒸米の時に発生する大量の湯気です。この湯気が煙突から出ていると、仕込みをしている証になりますが、甑倒しを迎えると、この湯気を見ることもなくなります。

また、甑倒しの日には、無事に仕込みが終了したことを祝う祝宴を開催する習慣があります。朝日酒造の製造部でも、毎年祝宴を開いていますが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止となりました。

甑倒しを迎えても、まだまだ気は抜けません。この後はもろみの管理、搾り、熟成…と、酒造りは6月下旬頃まで続きます。