酒造り歳時記「皆造(かいぞう)」
2020.06.25

特集

酒造り歳時記「皆造(かいぞう)」

「皆造(かいぞう)」とは、酒造り用語のひとつで、その年の最後のもろみの搾りを終えることをいいます。

自動圧搾機

「甑倒し」から約一か月後に迎えるのが「皆造」です。皆造は、文字通り、仕込んだお酒を”皆造り終えた”という意味から来ている言葉です。酒造りの最後の工程がもろみの搾りのため、仕込んだお酒を全て搾り終えた日を皆造と呼んでいます。

朝日酒造では、自動圧搾機を使い両側から圧力をかけることで、もろみを搾っています。この作業を「上槽」と呼び、ここでも蔵人の長年の経験が活きてきます。約一か月かけて造り上げたお酒に傷をつけないようにわずかな酒質の違いを見極め、少しずつかける圧力を上げていくのです。最後まで入念に、約半日かけてゆっくりと搾っていきます。

上槽

もろみを搾り、お酒とともに生まれるのが「酒粕」です。圧搾機に残った酒粕は一枚一枚丁寧に、すべて手作業ではがしていきます。単に酒粕集めをしているのではなく、その総量を量ることでお酒の量と酒粕量の割合が分かり、お米がどれくらい溶けたか等のデータを次期の酒造りの参考値として蓄積します。今期の酒造りで得た数値と経験が、次期の酒造りへとつながるのです。

朝日酒造の今期の酒造りは、松籟蔵は2019年8月20日から、朝日蔵は9月15日から始まり、松籟蔵は6月23日に、朝日蔵は6月25日に皆造を迎えました。
今期は、高温経過の影響を受けた原料米や過去にないほどの暖冬、さらには新型コロナウイルス感染症の予防による環境の変化があり、大変難しい酒造りでした。
そんな中、これまでの経験をもとに、「本年の酒造りに相応しい醸造とは」と杜氏と蔵人たちが力を発揮した結果、納得のいく酒質に仕上がりました。「令和元酒造年度全国新酒鑑評会」では両蔵ともに入賞することもでき、良い酒造期となりました。

貯蔵タンク

皆造後も、酒造りは続いています。搾ったお酒は数か月間低温で貯蔵し、目標の酒質になるまで香味を整えていきます。一夏超え、仕上がったお酒がみなさんのもとに届くまで、楽しみにお待ちください。