酒蔵で納豆がNGなのはどうして? その理由に迫る!
酒蔵にとって大敵である納豆。なぜ酒蔵に納豆菌を持ち込んでしまうことがNGなのか、その理由を探っていきましょう。
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酒造とは、その字の通り「酒造り」を意味します。本記事では酒造の意味や成り立ちをはじめ、 混同されることの多い「酒蔵」との違い、また「杜氏」や「蔵元」などの酒造を生業として働く人々の名称についても解説します。これまで読み方や意味をよく知らなかった、日本酒にまつわる言葉の知識を深めていきましょう。
まずは「酒造」「酒蔵」の意味や使い方、違いについて解説します。併せて、日本における造酒の成り立ちについても掘り下げていきましょう。
酒造は「しゅぞう」と読み、お酒を造ることを意味します。
「酒造業」「酒造家」「酒造免許」などのように使われ、同じ意味の「さかづくり」「造酒」という言葉に置き換えられることもあります。
日本における酒造の起源には諸説ありますが、有力とされているのは約1300年前の奈良時代に発行された「播磨国風土記」の中の一説です。そこには「神様にお供えした米にカビが生えたので、酒を醸して神酒として献上し、宴を開いた」という記述が残っています。
もともとお酒は神事や宮中行事に欠かせない神聖なものであり、平安時代初期までは朝廷の役所「造酒司(みきのつかさ)」で酒造が行われていました。「延喜式(えんぎしき)」という書物をみると、現代の酒造の基礎となる記述があり、さらに小麦を原料とする酒など多様な酒造が行われていたことがわかります。
その後、酒造技術は次第に民間へと広がっていきました。
室町時代には幕府が酒造を奨励したことから、京都を中心に酒造業が大きく発展を遂げます。この時代の酒造技術書「御酒之日記(ごしゅのにっき)」には、日本酒独自の製法「火入れ」の記載があり、酒造技術の発展が伺えます。
このように、時代とともにさまざまな試行錯誤が繰り返され、酒造技術は向上していきました。
PCやスマートフォンなどで「しゅぞう」を漢字変換するとどちらも候補に上がってくるため、酒造も酒蔵も「しゅぞう」と読むと思われがちです。しかしながら、酒蔵の正しい読み方は「さかぐら」です。
酒造が「酒造り」という行為や仕事を指すのに対して、酒蔵は「酒を醸造・貯蔵するための蔵」を意味します。「酒蔵の中で酒造が行われる」と覚えておきましょう。
酒造と酒蔵だけでなく、酒造を生業とする人々の名称もしばしば混同されることがあります。ここでは蔵元や杜氏など、代表的な名称の読み方や仕事内容を解説します。
蔵元は「くらもと」と読み、日本酒を製造・販売する酒蔵の経営者を指します。
中小規模の酒蔵では家族が経営に携わることも多く、その場合は経営者の家族も含めて蔵元と呼ばれます。
杜氏は「とうじ」と読み、酒蔵の醸造責任者を指します。
杜氏は酒造のリーダーであり、杜氏の下に蔵人とよばれる人々が配置されることから、酒造における「監督」とも言える存在です。長年の経験で培った優れた技能を持ち、ほとんどの杜氏が「酒造技能士」という国家資格を保有しています。
近年、蔵元自身が農業大学などで酒造技術の研鑽を積み、自らが杜氏として酒造を指揮する酒蔵も増えてきました。この場合は、蔵元と杜氏を兼ねることから「蔵元杜氏」と呼ばれます。
蔵人は醸造責任者である杜氏の下、酒造を行う職人の総称です。「くろうど」「くらんど」などとも読めますが、酒造りにおける職業としての蔵人は「くらびと」と呼ばれます。
酒蔵の規模によっても担当する仕事は変わりますが、道具の洗浄などの細かい作業から、専門知識や技術を要する高度な作業まで、日本酒造りのあらゆる工程に関わります。
釜屋は「かまや」と読み、酒造において酒米を蒸す工程の責任者です。甑(こしき)蒸し、釜の焚き付け、洗米や米量りなどを行います。
蔵元によっては日本酒造りを「一に蒸し、二に蒸し、三に蒸し」と言う場合もあり、釜屋の仕事もお酒の出来栄えに大きく影響します。
麹屋は「こうじや」と読み、酒造における米麹造りの責任者を指します。「大師(だいし)」と呼ばれる場合もあります。
日本酒造りには「一麹、二酛、三造り」という言葉があり、麹屋は日本酒の製造工程において最も重要な製麹を担う人々とも言えるでしょう。
酛屋は「もとや」と読みます。酛というのは、お酒のもととなる酒母(しゅぼ)のこと。酒母室と呼ばれる場所で、酒母造りを管理するのが「酛屋」の仕事です。
船頭は「せんどう」と読み、できあがったもろみを搾る工程の責任者です。
搾りに使う具を槽(ふね)と呼ぶことから槽を「船」になぞらえ、船を漕ぐ蔵人を束ねる役として「船頭」という名が使われるようになりました。
今回は日本酒を知る上でよく目にする言葉「酒造」について解説しました。「酒造」の意味や、酒造に携わる人々の名称を知ることは、同時に日本酒の歴史や技術に触れる機会にもつながります。それぞれの言葉の意味に注目すると、もっと日本酒が身近に感じられるのではないでしょうか。