日本酒をもっと楽しむおつまみレシピ|海老つみれのおつまみとろろ鍋
料理家・高橋善郎さんが提案する、日本酒のおつまみにぴったりの一品をご紹介。 「久保田」と一緒に、ご自宅での上質なひとときをお楽しみください。
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世界の国々で保存食や調味料として普及してきた発酵食品。腸内環境を整えて免疫を高める作用が期待できるなど、健康面におけるメリットが大きく、しかも日本酒との相性も抜群です。本記事では、料理研究家に聞いた発酵食品の魅力やメリットとともに、手軽にお家で楽しめるレシピをご紹介します!
目次
Profile
植松良枝(うえまつよしえ)
食材の旬を活用した季節感あふれる料理を提案する料理研究家。雑誌や書籍のほか、料理教室やイベント、レストランのプロデュースなど幅広い分野で活躍中。国内外を問わず旅をして歩くことが好きで、その土地ならではの食材や食文化に触れ、さまざまな魅力を発掘している。近著『春夏秋冬ふだんのもてなし』(KADOKAWA刊)の他に『バスクバルレシピブック』(誠文堂新光社刊)、『春夏秋冬 土用で暮らす。』(主婦と生活社刊)、『ホットサラダ』(文化出版局刊)などがある。
https://www.instagram.com/uematsuyoshie
「発酵食品は、人間にとって“薬”のようなもの。食べることで健康が保たれる、とてもすばらしい食品です」――植松さんはそう語ります。まずは、発酵食品について一緒に学んでいきましょう。
発酵食品には“食材を微生物などの作用で発酵させることにより加工した食品”と“微生物が関与せず発酵した食品”の2つの種類があります。
前者は、日本酒、味噌、醤油、みりん、かつお節といった日本における代表的な発酵食品で、パンやビールは「麹かび」、ワインなどアルコール飲料は「酵母」、漬物・チーズ・ヨーグルトは「乳酸菌」、納豆は「納豆菌」、お酢は「酢酸菌」が媒体となって発酵したもので、これらはすべて「微生物」が関与する発酵食品です。
これに対し後者は、紅茶、魚醤、塩辛といった、材料そのものが持つ「酵素」が作用して発酵が起こる食品もあります。
いずれも、もとの素材より保存性や栄養価が高まり、旨味が増すことが利点です。また、発酵食品はそれぞれの国や地域の気候や風土に根差したもので、人は長い歴史の中で、発酵食品による恩恵を受けてきたのです。
世界5大健康食品とされる、スペインのオリーブオイル、韓国のキムチ、ギリシャのヨーグルト、インドのレンティル豆(レンズ豆)、そして日本の大豆(味噌汁など)。
キムチ、ヨーグルト、そして味噌、と発酵食品が3つ入っていることからも、発酵食品が優れたパワーを持つことがうかがえます。
「古来より発酵食品は『美味しいから、日持ちがするから』と作られ、食べられてきたものですが、近年さまざまな研究がなされ、美味しいだけではなく身体に良い働きをもたらす効果が期待できることが分かってきています。発酵食品を摂取することによる数あるメリットの中で、発酵させることで食物の栄養素が分解され、体に負担をかけずに消化吸収されやすくなるというメリットは見逃せません」と植松さん。
たとえば塩麴に肉や魚を漬けるとタンパク質が分解され、肉質が柔らかくなり、アミノ酸も生成されるので旨味が格段に増すことが分かっています。
「発酵を介して“美味しい”と“身体に良い”が両立するなんて素晴らしいと思います。アジア諸国、とりわけ日本で古くから“旨味”というものが認識されているところを考えると、発酵食品の存在はつくづく偉大だと改めて感じます。発酵文化の発展なくして“旨味”の概念は生まれなかったと思います」
「発酵食品には乳酸菌をはじめ、腸内細菌を活性化し、腸内を整える働きのある善玉菌が豊富に含まれています」と植松さんは続けます。発酵食品というのは人間にとって「薬」のようなものなのだとか。
確かに発酵食品には腸内環境を整える働きをサポートする微生物や酵素が多く含まれています。細菌を正しく活性化させることで腸内を改善し、正常な身体の働きを保つことができるようになることがさまざまな研究から分かっています。
つまり、味噌、醤油、お酢、日本酒や甘酒…こうした発酵食品の一つひとつが、我々の健康をサポートしてくれているということ。
「美味しく食べられて、しかも身体に優しい。発酵食品は積極的に摂取したいすばらしい食品なんです」
「発酵食品が発達してきたのは、中国や日本、東南アジア諸国など、湿度が高い地域や、中東、および欧州南部の乳文化が発達した地域です。こうした国ではカビが生えやすかったり、生鮮食品が劣化しやすかったりしたため、さまざまな工夫が凝らされ、多くの発酵食品が誕生しました」
食材を発酵させることで、人間にとって有益な微生物が増え、腐敗を抑え、食材を長く保存することができるようになるというわけ。しかも、まだ科学が発達していない古代から、そうした知恵を受け継いできたという事実に驚きが隠せません。
発酵食品は、毎日継続して食べることが大切です。発酵食品には、飲み物や調味料、乳製品、漬物など幅広い種類があるので、バランスよく毎日の食事に取り入れましょう。
「日本では発酵食品はとても身近なもの。これまでも何気なく食べてきた人が多いことでしょう。ですから、そこまで強く意識する必要はないと思いますが、お味噌汁を飲んだり、酢の物を食べたり、食後のデザートにヨーグルトを添えたり、そうして発酵食品を食べることは、健康的な生活への第一歩になると思います」と植松さん。
朝食のサラダに塩麴を使ったり、夕飯に日本酒を添えてみたり。特に和食は発酵食品をふんだんに使う料理が多いので、和食ベースの食生活にするといいでしょう。
日本酒も発酵食品のひとつ。だから、発酵食品がとてもよく合うのです。
そこで、植松さんが考案した日本酒に合うおつまみレシピをご紹介しましょう。
「味噌と同量の酒粕とみりんを混ぜ合わせ、スライスした厚揚げを2~3日漬けたものをフライパンで焼くだけ。味噌の香ばしさと酒粕の甘さが際立つ、お酒がすすむ一品です」
<材料>(2人前)
絹厚揚げ 1~2枚
味噌 100g
酒粕 100g
みりん 大さじ1
※飾りに山椒の葉や穂じそ、ゆず皮のすりおろしを添えてもOK
<作り方>
①酒粕(板状)は細かくちぎって耐熱皿にのせ、水大さじ2(分量外)程度を振り、ふんわりとラップで覆ってからレンジで30~40秒加熱。粗熱がとれたら手でつまみながら、ペースト状になるよう練る
② ①と味噌、みりんを均一になるよう混ぜ合わせ、漬け床をつくる
③ラップを広げ、中央に②を厚揚げよりひとまわり大きな面積に5mmの厚さに広げ、厚揚げをのせる。厚揚げの上面にも同様に②を塗り、ラップでぴっちりと包んでビニール袋に入れ、冷蔵庫で2~3日漬ける
④厚揚げの周囲の味噌粕を取り除いたら、2cmの厚さの長方形に切り、食材がくっつかないタイプのアルミホイル(なければテフロン加工などくっつきにくいフライパンを使う)をフライパンの上に敷き、厚揚げを並べ、中火で焼き色がつくまで焼きます
「残った味噌粕に豚肉や白身魚を漬け込むと、美味しい味噌粕漬ができあがります」
「納豆の粘りがなくなるため、食べやすいのが特徴。香ばしいナッツと納豆の組み合わせは、意外にも日本酒にとても合いますよ。飲み過ぎないよう、注意してくださいね!」
<材料>(作りやすい分量)
納豆1パック 50g
コチュジャン 小さじ1
醤油 小さじ1
ミックスナッツ(粗く刻んだもの) 30g
白いりごま 小さじ1/2
小麦粉 大さじ1強
ごま油 小さじ1
<作り方>
①納豆をボウルに入れ、小麦粉を加えてよく混ぜ合わせる
②フライパンを熱し、ごま油をひいて①を入れ、納豆の粘りが落ち着いて、納豆の色が濃くなるまでほぐすように炒める
③ナッツとごまを加え、ぱらっとするまで弱火で炒める(炒め時間はトータル6~7分ほど)
④コチュジャンと醤油を加え、水分が飛んでカラリとしたらバットや皿などに広げてほぐし、粗熱を取れば完成
「サイコロ状にカットしたアボカドを添えてもとっても美味しいですよ」
「塩麴で漬けた木綿豆腐をクリーミーなソースにし、野菜を和えた一品。お子様にも食べやすい味なので、お酒のアテにも、普段の食卓にも使えます」
<材料>(4人分)
木綿豆腐 1/2丁
塩麴 大さじ4
こんにゃく 60g
絹さややアスパラガスなど 合わせて60g(1種類でもOK)
白ねりごま 大さじ1
<作り方>
①木綿豆腐が入るサイズの密閉容器を用意し、底に塩麴大さじ2を広げる。水気を拭いた木綿豆腐を入れ、豆腐の上から塩麴大さじ2を広げ、フタをして冷蔵庫で1~2日間漬ける。これ以上保存する場合は、塩麴を取り出しておく
②絹さやはヘタと筋をとり、アスパラガスは根元2cmを切り落としてからピーラーで表皮を根本のほうから2~3cmほど剥く。こんにゃくは3mmの厚さの細切りに
③塩少々(分量外)を入れたお湯で、絹さや、アスパラガスをそれぞれ20秒ほど茹でて火を通し、その後こんにゃくを湯がき、ザルに広げて冷ます
④絹さやは斜め2等分に、アスパラガスは2cmほどの長さに切る
⑤フードプロセッサーに、塩麴漬け木綿豆腐と練りごまを入れ、滑らかになるまでしっかり回す
⑥ ③の野菜とこんにゃくの水気をしっかりと切り、⑤で作った白和えソースとざっくりと混ぜ合わせる
「木綿豆腐を5日ほど漬け続けると、水分が抜けて濃厚なチーズのような味わいになります。わさびを添えて、お酒のおつまみにどうぞ」
“発酵”には、食材を美味しくする働きや、より栄養価を上げる効果などが秘められています。ぜひ毎日の食生活に取り入れていきましょう。
同じ発酵食品同士、日本酒との相性も抜群。晩酌の際は身近な材料を使った手軽な「発酵おつまみ」をお試しください。
Photo_Kohji Kanatani Interview & Text_Megumi Waguri Edit_Yasushi Shinohara