日本酒をもっと楽しむおつまみレシピ|はまぐりとそら豆の香草蒸し
料理家・高橋善郎さんが提案する、日本酒のおつまみにぴったりの一品をご紹介。 「久保田」と一緒に、ご自宅での上質なひとときをお楽しみください。
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待ちに待ったお酒がやってきました。フレッシュ、フルーティーな「久保田 萬寿 無濾過生原酒」。期待度の高いお酒にはやっぱり美味しいおつまみが欲しいのではないでしょうか。しかし、日本酒にはなんでも合うと思って適当にメニューを決めていては勿体ない。食材の組み合わせによってお酒を更に美味しくすることが出来るのです。季節感のある食材を使って旬のペアリングを試してみませんか。
目次
12月~2月の寒い季節に仕込みをする寒造り。それらのお酒が出荷ピークを迎えています。生酒、搾りたて、無濾過生原酒といったお酒が多く、この季節ならではの楽しみです。
「久保田 萬寿 無濾過生原酒」も年に一度の出荷で待ちわびていた方も多いのではないでしょうか。2月に限定出荷されるこのお酒は、真冬にじっくりゆっくりと発酵しているため上品で美しい吟醸香を放っています。同じように、寒い時期に脂をためていって美味しくなる白子やあん肝との相性も抜群で、食事と共に楽しみたい1本。
通常の萬寿は綺麗な吟醸香と程よい酸味、複雑な旨味でとにかくバランスの良い仕上がりですが、無濾過生原酒はフレッシュさと華やかな香りが特徴。開封した瞬間から百合のような可憐さと熟した果実のようなねっとりとした甘い香りが解き放たれます。その中に、生酒特有の麹っぽさと若葉のような青っぽさが立ち上がり、口に含むとトロリとした舌触りでキリリとした酸が印象的。甘味と苦味が混在し、後半は刺激が残りつつアルコールの余韻が続きます。全体的にボリューミーなお酒でアルコール度数が高いのですが、その度数を感じさせないほど香りが構築されています。このお酒に、これからやってくる春の食材を合わせて、季節限定のペアリングを楽しんでみましょう。
日本酒は料理に寄り添うと考えられていますが、実際には様々な食材や調味料、口に運ぶ順序によって味わいが変化します。お酒の特徴をしっかりと捉え、日本らしい四季を感じ、旬の食材を使って春らしいペアリング料理を作りましょう。
【材料】
・牛肉(肩ロース薄切り):200g
・菜の花:4本
・玉ねぎ : 1/4個
・にんにく(薄切り):1かけ
A
-ブイヨン(顆粒コンソメを水で溶く):1/2カップ
-レモン汁:小さじ1
-塩、胡椒 : 少々
【作り方】
① 菜の花、玉ねぎ、にんにくをさっと炒める。
② Aを加えて煮た後、ミキサーなどで撹拌する。
③ 牛肉に塩をふり焼き、②を添える。
お酒のボリューム感と料理のボリューム感を合わせるのは一番作りやすい方法。
アルコール度数が高めでふくよかな味わいのお酒には、お肉で質感を合わせます。特に、吟醸香を構成するエステルであるカプロン酸エチルが多い萬寿 無濾過生原酒。熟したリンゴのような甘い香りに例えられるカプロン酸は脂肪酸の一種で、焼いた牛肉の油脂とは相性抜群なのです。
そこに、ほんのり苦味のある菜の花に甘い玉ねぎを合わせたソースを添えて、奥深さを追加しました。
【材料】
・ホタルイカ(ボイルしたもの):100g
・そら豆:4本
・オリーブオイル: 大さじ1
・八角 :1個
・塩: 適量
【作り方】
① オリーブオイルに八角を1個浸しておく。
② そら豆をさやから取り、茹でる。
③ ホタルイカと②に塩をふり、①をかける。
日本酒なら刺身を食べたいと思うもの。そこで、刺身と純米大吟醸である萬寿 無濾過生原酒を合わせるなら醤油よりオリーブオイルがおすすめです。オイルが魚の生臭さを消し日本酒にフィット。つなぎ役として八角の香りを追加することで更にペアリングの質が上がります。
春の代表食材であるホタルイカは旨味も多く、日本酒のアミノ酸と重なることでキレの良いお酒でも余韻が感じられ、心地よいフィニッシュを迎えることが出来るのです。
【材料】
・たけのこ(あく抜きしたもの):適量
・揚げ油:適量
・国産粒山椒(無ければ粉山椒):適量
・塩:適量
【作り方】
① たけのこは食べやすい大きさに切る
② ①を素揚げする
③ 粒山椒を挽き、塩をふる
火入れを行わない生酒、それゆえ青っぽさや麹を連想させる香りが目立つのも特徴。そこにスパイスやハーブを加えることでマスキングすることが出来ます。特に国産の山椒をふることで、レモンのような爽やかさを感じ、香りのバリエーションが増えます。素揚げしたたけのこはサックリとした食感でジューシー。爽やかな山椒とたけのこで萬寿 無濾過生原酒も軽やかに飲めるのです。
蔵の技術の向上、流通の変化などによって生酒や搾りたてといったデリケートなお酒も自宅で楽しむことが出来るようになりました。美味しいお酒を自由に飲める環境にあるのですから、なんとなく晩酌にしてしまうのは勿体ないのではないでしょうか。ちょっとした知識やアイデアで、お店で味わうようなペアリングを体感できるのです。季節のお酒、旬の食材を組み合わせて毎日の食卓もワンランクアップさせましょう。
profile
まゆみ
酒匠、料理研究家。 1日も欠かすことなく酒を呑み続ける驚胃の持ち主。酒と蕎麦と音楽を愛する。著書「うち飲みレシピ」「スバラ式弁当」。