日本酒「久保田」と楽しむ、香川県のご当地グルメ3選
毎回1つの都道府県にスポットを当て、久保田ファンと朝日酒造社員が一緒にご当地グルメと久保田を味わいながら、その地域やグルメにまつわるトークを楽しむオンライン飲み会「久保田ご当地グルメ部」。今回は、香川県をテーマに開催しました。ファンや社員おすすめの、久保田と楽しめる香川県のご当地グルメをご紹介します。
楽しむ
「こどもの日」として祝う5月5日は、五節句のひとつ「端午の節句」です。地域によって行事食は違い、柏餅やちまき、出世魚のブリや“勝男”にちなんだカツオ、まっすぐ伸びいていくように願いを込めたタケノコなど様々です。しかし、菖蒲湯に入ったり菖蒲酒を飲むなど菖蒲を使うのは共通ではないでしょうか。実際に菖蒲酒はとても美味しいお酒です。端午の節句を祝う毎年の定番にしてみませんか。
そもそも節句とは「季節の節目となる日」のことを指します。中国から伝わった「陰陽五行」の思想が由来で、古くから年中行事の節目として大切にされてきました。陰陽五行では、奇数は縁起の良い “陽”、偶数は縁起の悪い “陰” と捉えるなかで、奇数同士を足して偶数になる日は “陽から転じて陰になりやすい” とされ、邪気を祓うための行事が行われました。
・1月7日「人日(じんじつ)」 七草の節句
・3月3日「上巳(じょうし・じょうみ)」 桃の節句
・5月5日「端午(たんご)」 菖蒲の節句
・7月7日「七夕(たなばた・しちせき)」 笹竹の節句
・9月9日「重陽(ちょうよう)」 菊の節句
この五節句は邪気を祓う行事として執り行われていたものですが、時を経て祝い事と解釈されるようになりました。そして制定当初は全て祝日でしたが、現在は5月5日のみ祝日として残っています。ただし、ほかの4つの節句も行事を行う風習は今なお根付いています。
端午の節句は奈良時代から行われている古い行事です。端午の節句の “端” は初めという意味で、“午” は5月初めの午の日ということから始まりました。旧暦の5月5日は現在の6月初旬~中旬。雨季を迎えるこの時期は病気や災害が増えることから、菖蒲の香りが邪気を祓うとされていたために軒下に吊るしたり、薬草を配ったりしていたようです。鎌倉時代に入り宮廷の節句行事は廃れていきましたが、武家の間では「菖蒲」と「尚武」をかけて大切な日となります。
江戸時代では5月5日は幕府の重要な式日で、大名や旗本が江戸城に出向き将軍にお祝いを述べていました。また、将軍に男子が生まれると盛大に祝ったことから、男子誕生のお祝いに結びついていったのです。明治時代になると政府の方針で節句行事が廃止されましたが、男子の誕生や健やかな成長を願う心は人々に深く浸透しており、やがて節句行事が復活し、現在に至ります。
菖蒲の節句とされているように、5月5日は菖蒲が欠かせません。
菖蒲というと紫色の花を咲かせるアヤメ科の花菖蒲を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、菖蒲湯や菖蒲酒に使うものはサトイモ科の菖蒲で全く異なるものです。
サトイモ科の菖蒲の方が香りが強く、精油成分で入浴剤などに使用されるα-アサロンやβ-アサロンは鎮痛や抗酸化作用、殺虫作用などもあります。菖蒲の主な芳香成分であるオイゲノールは同じく鎮痛や抗菌作用があり、独特の香りを示すショーブノンを含むセスキテルペン、レモンのような香りのモノテルペンなど様々な香りも含まれます。こうした薬効成分の効能が邪気払いの所以となったのかもしれません。
本来は生薬として重宝される菖蒲の根の部分を使用するのですが、なかなか手に入り難いのが現状。しかし、スーパーや生花店で売っている葉でも十分、菖蒲の香りを感じることができます。
簡単に美味しく菖蒲酒を味わえるのが、冷酒~常温の酒に浸す方法。
日本酒1合に対して菖蒲の葉1枚を入れ、30分~1時間ほど置きます。時間が経てば経つほど香りが付きますが、長時間置くと日本酒の良さも消してしまうので1時間以内が良いでしょう。
日本酒は「久保田 萬寿」がおすすめ。冷えすぎていると香りが閉じてしまうので15℃前後が最適です。萬寿の華やかさと丸みのある口当たりに菖蒲の爽やかさが加わって、火入れ酒で落ち着きのある萬寿でありながらフレッシュさが足され、満足度の高い味わいです。
温度が上がると日本酒も菖蒲も香りがふわりと立ち上り、菖蒲酒の醍醐味を感じられます。
日本酒は「久保田 千寿 純米吟醸」がぴったり。ちろりに千寿1合と菖蒲の葉1枚を入れて湯煎します。ポイントは葉を入れたまま温度を上げすぎないこと。温度が高いと菖蒲の苦みや辛みが出過ぎてしまうため、40℃程度がおすすめです。
冷酒の状態ではすっきり軽快でキリリと引き締まった千寿 純米吟醸ですが、湯煎したことによりうま味が広がって丸みを帯び、ふわりと柔らかく酸のバランスもよくなります。そこに菖蒲の成分が抽出され、丁子のようなスパイシーさが加わり、ついつい盃が進んでしまうほど。もっと温度が高い方が好みの場合は、菖蒲を取り出してから温度を上げていきましょう。
節句にはそれぞれ意味が込められていますが、5月5日の端午の節句は唯一の祝日。家族や友人たちと菖蒲酒を飲んで楽しく邪気を祓いましょう。冷や酒はフレッシュで爽やか、燗酒にするとスパイシーで濃醇な味わいに変化します。今まで菖蒲酒を味わったことがない方はこれを機に是非試してみてください。毎年、端午の節句が楽しみになるほどの美味しさに気づくはずです。
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まゆみ
酒匠、料理研究家。 1日も欠かすことなく酒を呑み続ける、驚胃の持ち主。郷土料理を大事にし、添加物の無い食卓を心がけている。ブログ「スバラ式生活」は人気。著書に、うち飲みレシピ、スバラ式弁当がある。