日本酒の種類はいくつある?「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」の違いを解説
日本酒は原料や製法などによって、いくつかの種類に分かれています。この記事では日本酒の「特定名称酒」のうち、「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」の3種類についてご紹介します。それぞれの特徴と魅力を詳しく解説しますので、日本酒を楽しむためにご活用ください。
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日本酒に添加されている「醸造アルコール」。添加という言葉から悪いイメージを持たれがちですが、醸造アルコールは日本酒の味わいにとっては大事な原材料の一つです。醸造アルコールが含まれているからこその美味しさや味わいもあります。ここでは醸造アルコールとはどういうものか、またその効果や代表的な日本酒などについて紹介します。
目次
日本酒を飲む方であれば、一度は聞いたことがある「醸造アルコール」。でも、この醸造アルコールについて正しく理解しているでしょうか?
日本酒には醸造アルコールが添加されたものと、添加されていないものの2種類に分かれます。添加されたものは"アル添"や"アル添酒"などとも呼ばれ、"添加"という言葉からいわゆる食品添加物のようなものを想像されたり、体に悪いものなのでは、と勘違いをされていたりすることも多いようです。
しかし、醸造アルコールは日本酒の味わいにとっては大事な原材料の一つです。醸造アルコールが含まれているからこその美味しさや味わいもあります。
まずは、醸造アルコールとはどんなものかを紹介します。
醸造アルコールは、国税庁で「でんぷん質物又は含糖質物を原料として発酵させて蒸留したアルコールをいうものとする」と定められています。
醸造アルコールは、主には廃糖蜜(砂糖を精製する時に発生する、糖分以外の成分も含んだ粘状で黒褐色の液体)や、トウモロコシ、サトウキビ、サツマイモなどを原料とし、この原料を発酵させて、アルコール分45度を超えるまで蒸留したアルコールのことです。実際には、何度も連続で蒸留し、95度程度まで濃縮させた状態で製品になっている場合が多いです。
基本的には無味無臭で、原材料のサトウキビやサツマイモなどの味わいや香りはほとんどないクリアなアルコールです。
日本酒の製造工程の中で、醸造アルコールを添加するのはもろみ末期のタイミングです。もろみを搾った後に添加するのは、酒税法の規定に外れてしまうため認められていません。
この添加するタイミングや量は酒蔵独自のノウハウであり、その酒蔵ならではの美味しさを引き出す技術の一つです。
米、米麹、水だけで十分美味しい日本酒が造れるのに、わざわざ醸造アルコールを添加するのはなぜでしょうか?
そもそも、醸造アルコールが登場したのは、産業として酒造りが盛んになっていた江戸時代頃と言われています。火落ち菌などの繁殖をおさえ、もろみが腐るのを防ぐために、アルコール度数の高い焼酎を添加するようになりました。この技術は「柱焼酎」とも呼ばれており、醸造アルコール添加の始まりと言われています。
また、第二次世界大戦前後の米が不足していた時代、低価格で日本酒を大量に製造するために、醸造した日本酒に醸造アルコールを添加し量を3倍に増やす「三倍増醸酒(三増酒)」というお酒が普及しました。お酒を薄め、場合によっては糖類などで調整もされていました。時代背景を反映したお酒といえますね。現在は、酒税法の製法で「二増酒」までとなり、三増酒は存在していませんが、その三増酒から醸造アルコール=悪いもの、というイメージが持たれてしまっているようです。
しかし、実際には醸造アルコールが日本酒の様々な美味しさを引き出しています。ここでは、その代表的な効果をご紹介します。
醸造アルコールを添加することで、すっきりとした味わいとなります。
前述した通り醸造アルコールは無味無臭で、日本酒に含まれる特徴的な味わいを和らげる効果があると言われており、それによってすっきりとした軽快な味わいに仕上がります。
酒蔵独自の特徴的な味わいを重視したい方は純米酒がおすすめです。
酵母によって生成された香りは、水よりもアルコールに溶けやすいという性質があります。つまり、香りとアルコールはとても相性が良いということです。
「吟醸香」と呼ばれる吟醸酒や大吟醸酒の華やかな香りは、醸造アルコールを加えることによって、より引き出されています。
日本酒の中でも所定の要件を満たしたものは「特定名称酒」と呼ばれ、原料や製造方法などの違いによって8種類に分類されます。
その中で、「純米」とついているものが醸造アルコールを含まない日本酒、「純米」がついていないものが醸造アルコールを含む日本酒となります。つまり、「本醸造酒」、「特別本醸造酒」、「吟醸酒」、「大吟醸酒」の4種類が醸造アルコールを含む日本酒です。
特定名称酒8種の分類に該当しない日本酒である「普通酒」または「一般酒」なども、醸造アルコールを含んでいる場合が多くあります。
なお、特定名称酒の場合、「醸造アルコールを原料の一部としたものについては、当該アルコールの重量(アルコール分95度換算の重量による。)が、白米の重量の10%を超えないものに限るものとする」と、量が定められています。
「久保田 千寿」は、久保田ブランドの中でも最初に誕生した、まさに原点とも言える久保田です。精米歩合は麹米50%、掛米55%の吟醸造りに、醸造アルコールを添加した吟醸酒です。
久保田の発売当時、日本酒と言えば甘口でコクの強い味わい、というイメージが一般的に定着していました。しかし、労働環境の変化により、これからはキレがありすっきりとした「淡麗辛口」が好まれると予見し、生まれたのが久保田です。
このすっきりして軽やかな味わいを実現するために、醸造アルコールは欠かせないもの。飲み進めるごとに洗練さが際立ち、よりすっきりした味わいを楽しむことができるのが千寿の特徴です。
ちなみに、千寿には「久保田 千寿 純米吟醸」という醸造アルコールを添加していない、純米バージョンの千寿もあります。こちらと飲み比べてみることで、醸造アルコールを含む吟醸酒と純米吟醸酒の味わいの違いを感じていただくこともできます。
久保田 千寿
1,800ml 2,430円(税込2,673円)
720ml 1,080円(税込1,188円)
300ml 500円(税込550円)
※商品の価格は2021年10月6日現在のものです。
日本酒の新酒の味わいを全国規模で競う「全国新酒鑑評会」では、金賞をとる日本酒の多くが、実は醸造アルコールを添加した吟醸酒や大吟醸酒です。つまり、酒蔵が一番自信を持って送り出す酒が、"アル添酒"ということです。
醸造アルコールの添加は、酒蔵独自の技術の表れであり、そして酒蔵独自の酒質や美味しさを表現するためのものです。ぜひ、"アル添酒"ならではの美味しさを再確認してみてはいかがですか?