これだけは知っておくと安心!日本酒を注ぐ・飲む時のマナー
食事にマナーがあるように、日本酒にもマナーがあります。今回は、これだけは知っておくと安心な日本酒に関するマナーをご紹介します。
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「もっきり」とは、升の中にグラスを置き、溢れるくらいなみなみと日本酒を注ぐ飲み方のことです。日本酒にはさまざまな飲み方がありますが、「もっきり」という言葉は聞きなれないという人もいるでしょう。この記事では、「もっきり」のルーツや升酒との違い、そして飲み方を解説します。
目次
「もっきり」とは升の中にグラスを置き、こぼれるくらい日本酒を注ぐスタイルのことです。居酒屋に行くともっきりに出くわすことがあるはず。わざと溢れるようになみなみと注ぐ様子が印象に残っている人も多いでしょう。まずは、なぜこの注ぎ方が「もっきり」と呼ばれるのか、その語源から見ていきます。
日本酒は今でこそ瓶詰めで販売されていますが、昔は量り売りをしていました。その時代は、酒屋の樽(たる)から徳利(とっくり)や升などに直接日本酒を注いで販売する形式が主流。これを「盛り切り」と言い、後に「もっきり」に変化したと言われています。
升はもともと計量のための道具であり、飲用の器として使われていたものではありません。しかし、木の香りのする升を器にすることで、日本酒の香りと相まっていつもとは違う楽しみ方ができます。そのため、現在では飲用の器として広く使われるようになっているのです。
「もっきり」は「盛りこぼし」と言われることがあります。これは言葉のイメージ通り、グラスを置いた升や受け皿にこぼれるほど日本酒を注ぐ様子から。
昔の居酒屋は1合(180ml)ずつお酒を提供するのがスタンダードでしたが、グラスが小さければ1合入りきりません。そんな時、グラスの下に小皿や升を置いてわざとこぼれるようにお酒を注いで量を合わせたのが、現代のもっきりスタイルの始まりと言われています。
この形が、次第にお店がどのくらい日本酒を注ぐかというパフォーマンスの一貫となりました。グラスから少しこぼれるように注ぐお店もあれば、こぼれた日本酒が受け皿に一杯になるほどなみなみと注ぐお店もあります。つまり、もっきりは「お酒を存分に楽しんでもらいたい」というお店からの「おもてなしの心」の表れでもあるのです。
升を使う日本酒の飲み方には「升酒」もあります。升はもともと「増す」や「益す」といった意味を持ち、縁起ものとされてきました。そのため、結婚式などの祝い事で升酒を目にする機会が多いでしょう。もっきりと升酒の違いは、グラスの有無です。升だけで飲む升酒に対して、グラスと升を使って飲むのがもっきりとされます。
杉や檜でつくられた升には1合升や5合升があり、もともとお酒を計量するためのものとしてつくられました。現在一般的に器として広く使われるのは1合升です。
升酒は日本酒に升の木の香りが移り、いつもの日本酒とはまた違った味わいを感じられます。日本酒にこだわりのあるお店では升酒を提供しているところもあるでしょう。
独特な注ぎ方が印象的なもっきりですが、実は飲み方のルールはありません。しかし、目の前でグラスになみなみ注がれるため、どこから手を付けるべきか迷うこともあるでしょう。ここでは、もっきりの粋な飲み方やきれいな飲み方を紹介します。
まず、少し動かすとこぼれてしまいそうな状態をどうすべきか、そこに迷う人が多いでしょう。もっきりは最初にグラスを傾け、溢れそうな日本酒を升の中に少し移すことできれいに飲めます。
グラスの日本酒を少し升に移して溢れない程度にしたら、グラスから先に飲みましょう。この時、グラスの外側についた日本酒の水滴が気になる場合はふき取って構いません。グラスから飲む時は、もちろん急いで飲む必要はありませんので、香りや味をしっかり堪能してください。
グラスの日本酒が少なくなったら、升に残っている日本酒をグラスに移しつつ飲むのがおすすめです。ほのかに日本酒に移った升の木の香りを楽しみましょう。
ここまでグラスを使う飲み方を説明してきましたが、グラスを使わず升に口をつけて直接飲んでも問題ありません。升から飲む場合は、力強い木の香りとともに日本酒を楽しめます。
升から日本酒を飲む場合、つい飲みやすい角の部分に口をつけてしまいがちですが、実は平らな部分に口をつけて啜るように飲むのが正式な飲み方。もちろん祝いの席など特別な場面でなければ角から飲んでも差し支えありませんが、正式な飲み方として知っておくと安心です。また、升の縁に塩を置き、塩をなめながら日本酒を味わう飲み方もあります。
もっきりで日本酒のお代わりをする場合、升は変えずに注いでもらうのがルールということも覚えておきましょう。
「もっきり」を含めて、日本酒には種類や飲み方がたくさん存在します。だからこそ、きれいな飲み方がわからず迷うこともあるかもしれません。しかし、知識を得て慣れれば、次第に場に合わせた粋な飲み方ができるようになります。まずは「もっきり」スタイルに慣れて、日本酒を心ゆくまで味わいましょう。