「にいがた酒の陣」攻略法! 日本酒「久保田」のファンが初出陣して分かったこと
3月に新潟市の朱鷺メッセで開催された「にいがた酒の陣2023」。コロナ禍を経て4年ぶりに帰ってきたビッグイベントに、日本酒「久保田」のファンも県外から駆け付けました。当日の現場の雰囲気や、より楽しむための攻略法を教えてもらいましょう。
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2020年4月18日(土)、朝日酒造では初のオンラインイベント「オンライン蔵フェス2020」を開催しました。杜氏と蔵人のトークライブやバーチャルでの酒蔵見学の案内、酒造り唄ライブをYouTube Liveにて 配信。今回の記事ではその模様をお伝えします。
目次
「オンライン蔵フェス2020」は元々、リアルイベント「蔵フェス2020 in 朝日山」として4月18日(土)に開催予定でした。
「蔵フェス2020 in 朝日山」はいわゆる蔵開きで、2018年から毎年開催している朝日酒造の一大イベントです。地域内はもとより地域外や県外の皆様にもお越しいただきたい、大人から子供まで多くの方々に楽しんでいただきたいとの想いから始まったイベントです。例年、4000人余りのお客様をお迎えしていました。
また、昨年からは長岡市内の酒蔵が合同で「越後長岡蔵開き」を開催し、今年もその準備を進めていました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、お客様の感染防止及び製造部門の安全管理面を考慮し、中止を決定。
別の方法で、蔵開きを、そしてその蔵開きの醍醐味である朝日酒造社員との交流を皆様に楽しんでいただける手段はないかを模索しました。辿り着いたのが“オンラインイベント”としての開催でした。
「オンライン蔵フェス2020」スタート直前の様子
当日の「オンライン蔵フェス2020」では、トークライブ、バーチャルでの酒蔵見学、酒造り唄の披露という3本立てでお届けしました。
登壇者は、松籟蔵・大橋杜氏と朝日蔵・渡辺課長。朝日酒造にある2蔵の、杜氏と蔵人によるトークライブです。
ちなみに朝日蔵・山賀杜氏は、「スジ蒔き」で今回は泣く泣く欠席。「スジ蒔き」とは、田植え前に行う、お米の種まき作業で重要な工程です。まさに、「酒造りは米づくりから」を山賀杜氏は実践中でした。
乾杯!
まずは乾杯タイム!乾杯酒は特別な時に飲みたい「久保田 萬寿」です。
「今日は皆様の新発見もあるかもしれません、楽しんでください。それでは、ご唱和お願いします。乾杯!」(大橋杜氏)
すると、YouTube Liveを視聴の皆様から続々と「乾杯」のメッセージが。中にはシンガポールから視聴されている方も。距離は離れていても皆様と繋がっている、そう感じた1コマでした。
続いて、大橋杜氏と渡辺課長が今回の乾杯に使った、愛用の酒器を紹介。
「冷やを飲むときに愛用している酒器です。器の下に重みがあり、安定しているので、深酔いしても倒さないのがメリットです」(大橋杜氏)
「90mlのグラスで、香りを楽しむのに適した形状、ワイングラスのようなつぼみ型。下に蛇の目の模様があり、きき酒も楽しめます(渡辺課長)
おつまみは、岡鶴堂本舗さんの「ほたる焼き」と源屋さんの「豆乳おからドーナツ」、さつまいも農カフェきららさんの「さつまいもプリン」。地元の人気スイーツを揃えました。
日本酒とスイーツのペアリングはいかに・・・?
「甘いものは酒を苦くする傾向があるのですが、このスイーツは上品な甘さなので、『久保田 純米大吟醸』のような華やかな香りのお酒と合いそうですね」(渡辺課長)
さらには今回特別に、物販店「酒楽の里 あさひ山」から、「蔵フェス2020 in 朝日山」で販売予定だった「おつまみセット」が届きました。合馬筍の神楽南蛮味噌和え、粕漬けクリームチーズの酒盗がけ、鰯越後漬け焼きの3種類のおつまみです。
「筍の食感と風味を、『久保田 千寿』が引き立て、おつまみも千寿も両方より美味しくなります」(大橋杜氏)
「久保田 萬寿」「久保田 千寿」
今年は朝日酒造創立100周年、そして久保田誕生35周年のメモリアル・イヤーです。大きな節目の年、4月1日の出荷分より「久保田 萬寿」「久保田 千寿」の美味しさをさらに進化させました。この美味しさのヒミツを、造り手の二人に語っていただきました。
「今回クオリティアップした千寿は、以前の味わいと全く違うタイプの酒にしたわけではないです。淡麗辛口という千寿の本線はぶれずにやわらかさをプラスしつつ、特長のキレは残しました。造りの面では、原料処理と麹造りを一層こだわりました」(大橋杜氏)
「萬寿のクオリティアップでは、深みのある味わいと、香りの調和を追求。深みある味わいを引き出すために、麹造りの精度を高めました。さらに、香りを引き出すために重要な米の溶け具合を入念に調整。米が溶けないと香りがあまり出ず、逆に溶かしすぎると雑味が出てしまうので、苦労しました。また、従来より貯蔵温度を5℃下げることで、よりフレッシュな味わいに仕上げました」(渡辺課長)
「久保田 萬寿 自社酵母仕込」
5月に新発売する「久保田 萬寿 自社酵母仕込」についても紹介。酒米・精米方法・酵母3つにこだわり醸したのが、「久保田 萬寿 自社酵母仕込」です。
「この商品は、酒米・五百万石を40%まで精米しています。五百万石は心白が大きく割れやすいため高精米は難しい品種の酒米ですが、精米担当が苦労して精度を高めました。なおかつ原形精米とういう米の形を維持したまま精米する技術により、雑味のもととなる米の表面部を理想の形まで削ることができました」(大橋杜氏)
また、トークライブでは、チャットでリアルタイムで質問を受け付け回答。蔵開きの醍醐味である、社員と皆様の“交流”、それをオンラインでも実現させたいとの想いから今回設置しました。
トークライブ中
さっそく質問が。先ほどの「久保田 萬寿」のクオリティアップの話ででてきた「麹造りの精度を高めた」話を具体的に聞きたいとのことでした。
「麹造りにおいては、酵素力価という基準を作っている。その基準をより精度を高め、旨味成分の高い麹造りに挑戦しました」(渡辺課長)
さらにここで質問が、「酵素力価」とは何か。
「麹はお米のデンプンを糖に変える酵素を生成する、その量のバランスを力価といっている」(大橋杜氏)
皆様からの質問により、トークの内容がどんどん深まっていく、オンラインライブならではの刺激的な1コマでした。
バーチャル酒蔵見学での山廃止仕込みの様子
続いては、酒蔵「朝日蔵」のバーチャル見学です。リアルイベント「蔵フェス」で例年人気が高い酒蔵見学を、オンライン上で開催しました。さらに普段の見学では入れない「麹室」や「山廃仕込みの作業場」にも潜入し、オンラインならではの酒蔵見学となりました。
案内役の朝日蔵・渡辺課長の分かりやすい解説付きで巡る酒蔵見学がスタート。敷地の入り口から、松籟蔵や調合棟の脇を通り、建物の外観も楽しみながら移動し、朝日蔵に潜入。巨大な蒸米機で大量の米を蒸しているシーン、蒸米に種麹を振りかけている麹造りのシーン、酒造り唄に合わせて仕込んでいるシーン・・・等、普段はめったに見ることができない貴重なシーン盛りだくさんでした。
見学案内中も、続々とコメントが。「格好いい建物ですね」「近代的な建物に意外性もあり」「凄く綺麗な建屋ですね」「本当に訪問してる気分」「行きたいな」「繊細な作業なんですね」「飲みたくなってきた」など。
私たちも、まるで皆様の隣で酒蔵を案内しているような気分になりました。
当日のライブ配信ではお答えできなかった質問もいくつかご紹介します。
まずは、「女性の杜氏さんもいらっしゃるのでしょうか?」とのご質問。女性の杜氏はいませんが、、酒造りを担う製造部には女性も在籍しており、調合担当として日本酒の味わいの最終決定を行う、重要な役割を任されています。
つづいてのご質問は、「自社精米ですか?」
使用している玄米の6割近くを、敷地内にある精米棟で、自社精米しています。
さらに麹室でのシーンでは、「麹菌を振いかけるのに使用している容器の名前は?」とのご質問が。
蔵では、「種切り器」と呼んでいます。
また、麹造りをする前には菌の力が強い納豆やみかんを食べないようにしているのかという話題で盛り上がりました。皆様から「みかん?!」とのコメントが多数寄せられましたが、みかん等の柑橘類のすっぱさを麹菌は嫌うため、昔は気にしていましたが、今は手洗い等の殺菌をしっかり行えば問題ないと分かったので、納豆同様、絶対に食べてはいけないわけではありません。
また、今回のYouTube Liveの裏配信として、Instagramのストーリーズでライブ配信を行いました。こちらはリアルタイムで、実際に「酒母室」と「麹室」に潜入し造りの様子を実況、その日ならではの臨場感をお届けしました。
「蔵フェス」での酒造り唄の披露
リアルイベント「蔵フェス」では例年、酒造り唄の披露でイベントを締めます。会場中に響き渡る力強い唄声は、皆様を魅了し、手拍子が起こり、会場が一体感に包まれます。今回のオンラインイベントも、皆様への感謝の気持ちを込めて、酒造り唄で締めくくりました。
酒造り唄は仕事唄といわれており、昔は、酒造りの品質を安定させるために、効率よく酒造りを行うために唄われてきました。例えば、唄によって仕込み時に加える米の量を数えたり、唄の長さでもろみの発酵具合を決める作業を調整していました。
今年の唄い手は、朝日酒造「酒造り唄を唄い継ぐ会」の、藤井と番場です。今回は、唄い継がれてきた数ある酒造り唄の中から、仕込み唄「もと摺り唄」と、酒造りの成功を神様に祈る唄「切り火」を披露しました。
「オンライン蔵フェス2020」での酒造り唄の披露
チャットで「歌詞は?」という質問もありましたので、今回特別に、「もと摺り唄」の歌詞をご紹介します。息の合った掛けあいがポイントの唄です。
トーロリナー アヨー トロリート 今摺るもとは
(酒にナーヨー 造りて 江戸へ出す)
江戸へナー アヨー 出すとは 昔の事よ
(今はナー アヨー 世が世で 地ではける)
地でもナー アヨー はける酒 名のある御銘酒
(酒はナー アヨー 久保田か 朝日山)
朝日ナー アヨー 山とは 何方がつけた
(越路ワー アヨー 朝日の 朝日の衆)
めーでたなー アヨー めでーたーや この屋の館(やかた)
(せーんしゅナー アヨー らくとは おめでたい)
アソラ 中ついて 側ついて シャーンに しょう
(おいらも 真似して シャーンにしょう)
慌ただしいなか企画がスタートした「オンライン蔵フェス2020」でしたが、全国、世界各地の皆様からの温かいメッセージに応援されながら、無事にフィナーレを迎えました。
「本日はありがとうございました。時節柄厳しい時期ではありますが、皆様お体にはお気をつけて、今後も美味しいお酒をたっぷりお楽しみください」(大橋杜氏)
「本日は視聴いただきましてありがとうございました。これからも皆様に美味しいと言われるお酒を醸していきます。今後も、久保田、朝日山をよろしくお願いいたします。早く蔵に遊びに来ていただける日が来ることを楽しみにしております」(渡辺課長)
今回の「オンライン蔵フェス2020」を通して改めて感じた、“交流”の大切さ。皆様の声が、美味しい酒造りへのスパイスとなります。新型コロナウイルス感染症により従来のようなリアルコミュニケーションが難しくなっている今だからこそ、コミュニケーションの在り方を見つめ直し、ピンチをチャンスに変えていきます。
「和醸良酒」という言葉があるように、良い酒は一人では醸せません。社員が一丸となり、そして皆様と一緒に、美味しい日本酒を、そんな日本酒を楽しめる新たな体験を創ってまいります。
「蔵フェス2019 in 朝日山」