酒造りは、米づくりから。黄金色の世界のなか、稲刈りがスタート
2020.09.07

特集

酒造りは、米づくりから。黄金色の世界のなか、稲刈りがスタート

朝日酒造は「酒造りは、米づくりから」との想いから、農地所有適格法人「有限会社あさひ農研」を1990年に設立。農業と醸造は、一体、かつ、一貫であるという「農醸一貫」を実現するため、酒造りに最適な米を育てています。今年は、設立から30年目。そんな節目の年の豊作を祈願して、米づくりの様子をレポート!今回は主に、出穂や開花、稲刈りの様子をご紹介します。

目次

  1. 酒造りは、米づくりから
  2. 苗の生長日記
    1. 出穂
    2. 開花
    3. 登熟期
    4. -実際の田んぼを使った栽培試験
    5. 稲刈り
  3. 良米をつくり、良酒を醸す

酒造りは、米づくりから

朝日農研

酒造りにおいて、水とともに欠かせないのが「米」。朝日酒造のかつての杜氏が「酒の品質は、原料の品質を越えられない」という言葉を残したほど、米の品質は重要です。酒蔵を構える新潟県長岡市越路地域では古くから、その風土を活かした米づくりが行われ、新潟県内でも指折りの米どころとなっています。

朝日酒造は、地域の農業を守り、よりよい酒米を生産する目的で、農地所有適格法人「有限会社あさひ農研」を1990年に設立。厳格な品質管理のもと、酒造りに最適な米を育てています。

「五百万石」「たかね錦」「ゆきの精」「越淡麗」「千秋楽」という5種類の米を栽培し、これらの米が原料となり、「久保田」や「朝日山」、「越州」といった朝日酒造の日本酒が誕生しています。

苗の生長日記

出穂

出穂

7月中旬、ついに「出穂(しゅっすい)」を迎えました。茎の中にいた穂の赤ちゃんが、さやを割って外に出てきたのです。茎の約半数が出穂する時期を「出穂期」、すべての穂が揃う時期を「穂揃い期」と呼んでいます。

出穂期は、穂が栄養を蓄える重要な時期です。田んぼの入水→自然落水→入水を繰り返して水を換え、根に酸素を補給しています。
栄養を蓄えるためには、天候が大きく影響します。葉で光合成を行ってブドウ糖を作り、穂に送り、デンプンとして蓄積されることで、お米ができます。お米をたっぷり実らせるためには、日光が重要。晴天を祈る日々がしばらく続きました。

開花

開花

出穂すると、すぐに開花します。稲の花は晴れた日の午前中にだけ、開花時間は約2時間と、なかなか見ることができないレアな花です。
穂1本あたり、100~200個ほどの小さな白い花を咲かせます。この時受粉され籾になり、米となります。

登熟期

朝日農研での実験

出穂・開花すると、「登熟期」に入ります。葉の生長がとまり、ここからは「穂」の生長に、全身全霊を注ぐ期間となります。光合成で作り出したブドウ糖も、土から吸収した養分も、最優先で穂に送り込まれます。

一般的には、昼夜の寒暖差がある方が良いお米ができると言われています。昼は太陽の光で光合成を行い、夜になると、昼に作ったブドウ糖を籾に送り込みデンプンとして蓄えられます。夜の気温が高いと稲の呼吸が盛んになり、せっかく作ったブドウ糖を消費してしまうので、夜は涼しい方が良いのです。

-実際の田んぼを使った栽培試験

稲

朝日酒造では、あさひ農研の田んぼを使用した栽培試験を行っています。田んぼ毎に条件を変え、酒米を栽培し、それぞれの酒米としての適性を調べることで朝日酒造の求める酒米の育成方法を模索しています。

実験田では、朝日酒造の品質保証部の担当者が、毎週稲の生育調査を実施しています。実験田それぞれに10株の計測苗があり、人の手と目で1株1株観察しています。

数値分析

具体的には、定規で草丈・穂の長さを測り、穂の本数を手作業で数えています。
葉緑素計という機械で葉の色を計測することで、稲の栄養状態を把握します。
今年は長雨により、例年と比べると草丈が長い傾向です。毎日の天気予報から目が離せませんでした。

稲刈り

稲刈り

8月25日、夏の日差しを受けキラキラ輝く田んぼに包まれながら、今年も稲刈りが始まりました。酒造好適米の早生品種「五百万石」の稲刈りです。
稲刈りはタイミングが重要。穂が黄金色に色づき、ぷっくりと膨らんでいることを確認した上で開始します。遅れると、籾が熟れすぎて米の色つやが悪くなり、品質が下がってしまいます。

稲の穂

刈り時を見逃さないためにも、日々の観察とこれまでの経験、天候状態を見ながら、稲刈り日を決定しています。
今年は穂の長さは平年並み、長雨により桿長は平年より長く、籾の数は多い傾向でした。

コンバイン

ついにコンバインが登場!田んぼの外周から内側へと、あれよあれよという間に稲を刈っていきました。
採った籾はすぐにトラックに乗せ、地元農協のカントリーエレベーターまで運び乾燥させた後、等級検査を受けます。全量1等以上の品質であってほしいと願うばかり。その後朝日酒造に搬入され、酒造りの原料として使われます。

刈り取り後

9月下旬まで稲刈りは続きます。 実りの秋ならではの新潟の風景を見られる日々の到来です。

良米をつくり、良酒を醸す

米づくりは、生育状態と外部環境を観察しながら…まさに酒造りと一緒です。米づくりの知見が酒造りに生かされ、酒造りの知見が米づくりに生かされています。
「酒造りは、米づくりから」との想いのもと、良き米をつくり、そして良き酒を醸し続けていきます。