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久保田40周年記念「KUBOTA CONNECTIVE TIME」イベントレポート
「久保田」の発売から40年。これを記念して2025年10月30日(木)~11月3日(月・祝)の5日間、渋谷スクランブルスクエアイベントスペースにてポップアップイベントが開催されました。見て、知って、味わえるイベント。大盛況となった会場の様子をレポートします。
江戸時代後期の久保田屋
朝日酒造は、2030年に創業200年を迎えます。1830年、天保の大飢饉にみまわれ米を集めるのが大変だった時代に「久保田屋」の屋号で酒造りを始め、“久保田の酒”と呼ばれていました。現在も主力銘柄のひとつである「朝日山」の発売は明治時代半ば。その後、大正時代に入った1920年に朝日酒造として株式会社化。1926年には販売店組織「朝日山会」を設立し、1929年にはホーロータンクを導入して酒質の向上と品質保証に取り組み、スパークリング清酒の開発といった時代の先を見据えた酒造りを行ってきました。
日本酒「久保田」の誕生
明治時代に発売された「朝日山」は、蔵がある地名の朝日からとって銘柄としました。これ以降、「朝日山」を造り続けてきましたが、原点回帰の意味も込め、屋号であった久保田屋の名を冠した新しい日本酒「久保田」を1985年に発売します。
当時はビールや洋酒といった他の酒類に押されて需要が減りつつある中、都市に暮らす人々の働き方や食生活の変化に合わせた日本酒を追求していきました。1985年5月21日に「久保田 千寿」「久保田 百寿」が発売されると、芳醇旨口が主流だった日本酒業界に “すっきりとしてキレのある日本酒こそ美味しい” と新たな価値観が生まれ、新潟淡麗辛口ブームが巻き起こります。翌年の1986年には久保田の最高峰とも言える「久保田 萬寿」が発売され、生酒の「久保田 翠寿」、山廃「久保田 碧寿」と続き、1993年には「久保田 紅寿」が発売されました。
久保田40周年記念ポップアップイベント
現在の「久保田」は17種類になり、商品数も増えました。その全種類の展示や、12種類飲み比べセット、ワークショップなど久保田の魅力を体感できるイベント「KUBOTA CONNECTIVE TIME」が開催されました。開場時間前から入り口には長蛇の列。渋谷のイベントスペースにこれだけの人が集まるということは、「久保田」の人気もさることながら日本酒へ興味のある方がたくさん居るのだと実感します。そして、初めて飲む日本酒との出会いは最高の思い出になって欲しいと、満20歳を対象に1日10名限定で「久保田 萬寿」を提供するサービスが。そのおかげでしょうか、若い年代の方々も訪れていました。
久保田12種類飲み比べセット
多くの人が目的にしていた飲み比べセット。今の時期に飲める「久保田」12種類を一度に試せるとあって、圧倒的なお得感。
①久保田 スパークリング ②久保田 翠寿 ③久保田 萬寿 自社酵母仕込 ④久保田 萬寿 ⑤久保田 純米大吟醸 ⑥久保田 千寿 ⑦久保田 千寿 秋あがり ⑧久保田 紅寿 ⑨久保田 千寿 純米吟醸 ⑩久保田 百寿 ⑪久保田 碧寿 ⑫久保田 雪峰
初心者でもそれぞれテイスティングすれば好みの傾向がわかるようになっており、上級者は好きな久保田を単品で注文してじっくりと味わっています。「普段は千寿しか飲む機会がなかったけど、こんなに種類があるとは知らなかった。他のも美味しい!」という声も聞きました。何より、スクランブル交差点を一望できる絶景の窓際カウンターで飲む日本酒は格別です。
一口に「久保田」と言っても味わいは多様。12種類の中に新しい発見もあり、まさに好みの1本を見つける作業は貴重な時間。気に入った種類があれば、商品カードを持ち帰れるサービスもありました。
食中酒の大切さを重要視してきた「久保田」ですから、それぞれに合うミールプレートも用意されています。米粉でつくるイカ明太チヂミ、デミグラスミートボール、ハーブ香る 魚介アヒージョカナッペの3種類。「これには千寿だよね。」「いやいや、スパークリングの方がいいよ。」「萬寿の方が合うと思うな。」と、どのテーブルも会話が弾んでいるのが印象的でした。こんな風に試せるのも、飲み比べセットがあるからこそ。自宅でペアリングする参考にもなったことでしょう。
6種類飲み比べワークショップ
抽選になるほど好評だった体験型の飲み比べワークショップ。タイプの違う久保田6種類を飲み比べた後は、日本酒の豆知識を学ぶ場に。精米歩合やアルコール添加に関することなど、ちょっとした知識を得ることで日本酒を深く味わうことが出来ます。
最後に好きだった久保田は?という問いには、「久保田 純米大吟醸」が一番人気となりました。
久保田の歴史の中で新しい変化が起きたのは、2017年。初めて他企業とコラボレーションした「久保田 雪峰」、そして華やかな香りを持つ「久保田 純米大吟醸」です。この「久保田 純米大吟醸」は高く評価され翌年2018年から通年商品となりました。新たなラインナップは25年ぶりですから、淡麗辛口だけでは語れない本当の美味しさの追求です。そして現在、「久保田 純米大吟醸」がこれだけ美味しいと言われ続けているのは、やはり当時からの先を見据えた酒造りという結果なのかもしれません。
おとなの週末トークショー presented by KUBOTA
11月1日(土)は、マッキー牧元氏と「おとなの週末」の門脇編集長が登板してのトークショーも開催。それぞれの久保田の味わいに関することや、ペアリングについて対談しました。タベアルキストのマッキーさんは、様々な場所で日本酒を嗜む機会が多いようですが、その中でも「久保田 純米大吟醸と久保田 萬寿 自社酵母仕込が大好き」だといいます。「萬寿 自社酵母仕込は華やかな香りで、果物にも合うしチーズを使った洋食にも。純米大吟醸は、フルーティーさもありながらキレもあって、とにかく完成度が高い。お酒だけでも満足しちゃうくらい。」と魅力をアピールしています。「純米大吟醸に蕎麦を浸して食べるのも最高だったよ。」と蕎麦好きのマッキーさんならではのコメントも。門脇さんは、初めて飲んだ久保田が千寿だったそうで「王道のイメージがありました。穴子の白焼きなんかよく合いますね。紅寿はバナナ系の香りがあるので、グリーンカレーなどココナッツを使ったタイ料理にもぴったり。」とそれぞれの特徴を捉えています。
最近は、家庭でも食事と日本酒を合わせたり、イタリアンやフレンチでもコースに日本酒が組み込まれる機会が増えました。ペアリングについては、自由に楽しんで欲しいとふたり共声を揃えています。
「これとこれが合うと決めつけるより、むしろ合わないのも楽しんで欲しい。ペアリングって人それぞれで、美味しいと感じるのも人それぞれ。自分が美味しいと思っても他の人はそうでないかもしれない。それも全部ひっくるめて楽しむのがペアリング。」
「例えばワインの場合、赤ワインと塩辛って合わないと言われていて。実際に食べると、本当に合わないと思った。でも、それも面白いよね。日本酒には和食と決めつけないで、むしろ合わなそうなメニューをぶつけてみるのもいいかもしれない。」と門脇さん。食に関するスペシャリストだけあって、ペアリングの面白さを堪能できる上級者。貴重な話が聞けたトークショーでした。
久保田40年の歴史を実感
会場では「久保田 千寿は知っている」「千寿なら飲んだことある」という声をよく聞きました。千寿から始まり、40年経って現在は17種類。味わいも広がり、若い世代に向けた商品も増えました。「久保田が好きになった」とフォトプロップスで撮影する方も大勢いて、淡麗辛口の先を行く久保田の流れを体感できる機会だったと確信します。参加者のみなさんが帰り際に「すごく楽しかった!大満足!」と話す声が聞こえ、友人や家族たちと日本酒イベントを堪能した様子を垣間見ることができ、嬉しくなりました。
参加できなかった方も、40周年を機に、普段飲んだことのない久保田を手にとってみてはいかがでしょうか。お店で、自宅で、きっと新しい久保田との出会いがあると思います。
酒匠、料理研究家。 1日も欠かすことなく日本酒を呑み続ける、驚胃の持ち主。立ち飲み屋に自ら立ち、日本酒の普及に努める。著書「うち飲みレシピ」「スバラ式弁当」。