日本酒・久保田をもっと楽しむWEBマガジン

人気ビストロオーナー×企画担当者が舌戦!久保田 純米大吟醸NEWデザインと日本酒の未来
2020.10.01

特集

人気ビストロオーナー×企画担当者が舌戦!久保田 純米大吟醸NEWデザインと日本酒の未来

若者の日本酒離れが声高に叫ばれる世の中。どのようにアピールすれば、日本酒が若者の心に刺さるのか。今回はラベルデザインを一新した「久保田 純米大吟醸」の企画担当者と、ミシュラン星付きレストラン出身のビストロオーナーシェフが、本音で舌戦を繰り広げてくれました。見ている方がハラハラしてしまう熱いトークをご覧ください!

目次

  1. 「久保田 純米大吟醸」の新デザインを企画担当者がプレゼン!
    1. 今、若者層に日本酒を届けたいワケ
  2. リアルな若者は日本酒をどう思っている?
  3. 楽しみ方のバリエ増が日本酒認知を広げる?
  4. 久保田ブランドの未来のために宮本さんが緊急提言!?
    1. 日本酒のスタンダードだからできること
  5. おわりに

「久保田 純米大吟醸」の新デザインを企画担当者がプレゼン!

「久保田」のラインアップの中で、“最もメリハリを感じる美酒”として人気の「久保田 純米大吟醸」が2020年の今年、パッケージをリニューアル。これまでの和紙を使った定番デザインから、英字を配したモダンなデザインへ――この変更には、企画担当者のどのような想いが込められているのでしょうか。

「より多くのお客様に久保田を届けたい。そのためにデザインを一新しました。20~40代の、まだまだ日本酒を飲む機会が少ないお客様にぜひ手にしてほしいと思っています。そこで、洋食やカジュアルな飲み会のシーンにも溶け込むよう、思い切ったラベルのリニューアルを行ったんです」
そう語るのは、朝日酒造で商品企画を担当する今井光彦さん。新潟で生まれ育ち、久保田をはじめとする地酒に親しんできた、日本酒愛にあふれる若手社員です。

「なるほど。良い意味でも悪い意味でも“堅さ”を感じるデザインではありますが…そこはあえて狙ったものですか?」
今井さんにこう切り返したのは、東京は代々木上原で“予約の取れない”レストランとして有名なビストロ「36.5℃kitchen」を経営する宮本岳さん。まだ35歳という若さながら、ミシュラン星付きレストランで経験を積み、料理学校の講師を経て自身のお店を出した凄腕シェフです。宮本さんInstagram

●宮本さん「あくまで僕の視点になりますが、かなり堅いデザインという感じがします。今、感度の高い20~30代の若者層にウケているのは、ナチュールワインやクラフトジン。共通していえることは製法にコンセプトやルーツがしっかりあって、ラベルがオシャレということなんです」

○今井さん「まだまだ堅いですか…。ただ、この堅さには実は理由があるんです。手に取っていただきたいという想いはもちろんありますが、久保田らしいシャープなキレ、モダンな味わい、そうしたものをラベルに反映しているんですよ。久保田は今まで英字をメインにしたラベルがないのですが、それを使うことで、新しい挑戦をするという意気込みも表現しているんです」

●宮本さん「なるほど。そういわれると確かにブランドイメージとして壊してはいけないところですね。僕自身は、これまでのラベルもとても気に入ってるので、前のままでいいんじゃないか?って思ってしまうのですが。他の久保田と差を付けるという意味では、こういうリニューアルはいいかもしれませんね」

○今井さん「ありがとうございます」

今、若者層に日本酒を届けたいワケ

●宮本さん「ところで…なぜ、若い世代に飲んでもらいたいと感じたんですか?日本酒は安定したファンが付いているので、ある意味そこまで焦らなくてもいいのでは?と思ってしまうのですが」

○今井さん「久保田のことは知っているけれど、“THE 新潟”や“THE 淡麗辛口”というような認識をしてしまっていたり、近年人気の甘みや香りが強いタイプとは違うと考えている人が多いんです。久保田 純米大吟醸は、まさにトレンドのテイストに合ったお酒なので、もっと多くの方に飲んでいただけたら嬉しいな、と」

●宮本さん「確かに。試飲させてもらいましたが、この純米大吟醸はこれまでの久保田と一線を画している気がしますね」

○今井さん「久保田そのものは発売から35年ほど経っていて、発売当初にファンになってくださった方々から長く愛飲していただいています。でも、そうしたファンも60歳を過ぎて、世代の若返りができていないことも課題のひとつなんです。弊社で調べたところ、久保田の認知度は日本酒をあまり飲まない方を含めても約9割と高いのですが、20代だと6割程度に落ちてしまう。“これから日本酒を楽しむ”世代にファンを広げていかなければならないと思っています」

●宮本さん「そうだったんですね。久保田って基本、美味しいですからね。確かにラベルを変えることで、これまでなじみのなかった人も手に取るようになるならいいですね」

○今井さん「2年ほどかけてさまざまな調査を行い、それをラベル変更に落とし込んでいるんです。デザインも100案近く作り、多くのお客様に意見を聞きました。久保田らしさは損なわれていないか、高級感はあるか、自宅や飲食店で飲むときに違和感がないか。そうした部分を徹底的に聞き取りました。そうして絞り込み、ブラッシュアップしたものが、この久保田のラベルなんです。社内でももちろん葛藤はありましたが、手に取ってもらうためには変化も必要だと考えています」

リアルな若者は日本酒をどう思っている?

○今井さん「ところで正直なところ、宮本さんの周りの若い方は日本酒をどのような存在として受け止めているんでしょうか?」

●宮本さん「僕は今35歳なんですが、同世代では“最近、日本酒を飲み始めた”という人が多いですね」

○今井さん「30代でようやくスタートラインってことなんですか」

●宮本さん「お酒って、お店――というか、食べる料理と紐づいているものだと思うんです。そうなると、20代は安くてワイワイ楽しめる、いわゆる大衆居酒屋に行くことが多いじゃないですか。そうなると、ビール・ハイボール・チューハイ、そういったお酒を飲むことが多いんですよね。
でも、30代に入って生活が安定してくると、ワンランク上のお店に行けるようになる。回らないお寿司屋さんだったり、天ぷら屋さんだったり、そういうお店に行くようになると自然と日本酒にも手が伸びるようになると思うんです」

○今井さん「なるほど…」

●宮本さん「日本酒を飲みたいからお寿司屋さんに行こう、っていう人はなかなかいないと思うんですよ。お寿司を食べに行って何が合うかを考えて日本酒を選ぶのが普通じゃないかな、と。
もちろん日本酒は、お米からできているだけあって、和食はもちろん日本人の味覚向けに作られる料理の大半に合うわけで。もっともっと飲まれていいものだは思いますけどね。ただ、若いときはそこまでお金もないので…」

○今井さん「価格的な問題があるということですね」

●宮本さん「特に若いころは、お酒の味を楽しむより“手早く酔いたい”という気持ちが強かったりしますから。でも、この純米大吟醸は価格でいえばかなりお手軽ですよね」

○今井さん「そうなんです。本来、日本酒は値段が高いものの方が確実に美味しいもの。純米酒、しかも大吟醸であれば、本来はもっと価格設定は高くなるものなんですよ。
でも、そこをあえてクオリティは高く、値段は抑えめにしているんです。この純米大吟醸を飲んで“日本酒ってこんなに美味しかったんだ!”という体験を多くの方にしていただきたいので」

●宮本さん「いいですね!ちなみに、僕のお店には“今日は美味しいものを満喫する!”っていう感じで来られる若いお客さんがたくさんいます。でも、だからといってケチケチするのではなく、ある程度の価格のワインを楽しんでくれる。つまり、若い人でもお金を使うときはきちんと使うんです。見せ方・出し方・雰囲気…そういう部分を大切にすることで、若い人の心を掴むことができると思います」

楽しみ方のバリエ増が日本酒認知を広げる?

●宮本さん「そうだ、ちょっと聞いてみたかったんですが、酒造メーカー的に日本酒をストレート以外の飲み方をするのってタブーなんですか?」

○今井さん「そんなことは一切ありませんよ!弊社でも日本酒カクテルなどを提案させていただいています。もちろん社内でも、割って楽しんでいる人間はたくさんいますし」

●宮本さん「そうだったんですね。なんかこう日本酒ってちょっと敷居が高いイメージがあるというか。手塩にかけて作ったんだから、このまま楽しめ!っていわれそうな感じがするんですよね」

○今井さん「原酒に氷を入れて飲む方もいらっしゃいますし、純米酒にレモン果汁を数滴たらすだけでもグッと味わいが変わって美味しくなる。以前、某誌のイベントで試飲会を行ったのですが、柚子の輪切りを入れたものをご用意させていただいたら女性にとても好評でした」

●宮本さん「若い人たちは日本酒はストレートで飲むもので、他に楽しみ方がないって思い込んでいる人が多いかもしれませんね。カウンターでぐい飲みを片手に背中丸めて飲む、そんなイメージがあまりにも強くて」

○今井さん「日本酒は混ぜちゃダメ、アレンジなんかしたらせっかくの味わいがおかしくなる。そう思っている方は多いように思います。でも、日本酒はあくまでも嗜好品のひとつ。自由に飲んで楽しんで、新しい美味しさを発見してもらいたいですね」

久保田ブランドの未来のために宮本さんが緊急提言!?

●宮本さん「ここからは、ちょっとキツいことをいわせていただきますね。
日本酒って地酒といわれるだけあって、各地でそれぞれの土地柄に合ったものが作られていますよね。なので、旅先ではそこでしか飲めない日本酒を頼んでしまう。
言い方が悪いかもしれませんが、久保田って有名になりすぎて選ばれなくなってしまっているんじゃないか?って思ってしまうんです。例えば都内のお店であったとしても、今日はちょっと特別なお酒が入ってるんですよっていわれたら、そちらを選んでしまう人が多いと思うんです」

○今井さん「そこが、本当に悩ましいところなんですよ…。久保田はいつでも飲めるから、無理して飲もうと思わないなんてご意見もいただいています」

●宮本さん「メジャーになってしまうと、どうしても没個性的に見られがちですからね」

○今井さん「ただ、久保田は安心感があるとおっしゃってくださる方も多いので、うまく住み分けしていただけたらいいな、と思っています。ちょっと変わったものを飲みたくなったら個性の強い地酒を。でも、ホッとしたい瞬間や乾杯の一杯は久保田 純米大吟醸、のように楽しんでいただけたら嬉しいですね」

日本酒のスタンダードだからできること

●宮本さん「久保田はある意味、日本酒のスタンダードであり鉄板でもある。
だから、“久保田を飲まずに日本酒は語れない”くらい宣伝していいんじゃないですかね(笑)。日本でも世界でも有名なものなので!あ、他の酒蔵さんから怒られちゃうのかな(笑)。でも、朝日酒造さんが大きく出て、これが日本酒だ!みたいにいってしまって。他の酒蔵さんが挑戦を受けて燃える。
そうやって日本酒熱を熱くすれば、メディアも“なんか日本酒業界がヤバいぞ!?面白そうだぞ!?”って注目してくれる。ニュースになればなるほど、みんなが日本酒を飲む機会が増えていく――どうですかね(笑)」

○今井さん「確かに面白そうですね。今、さまざまなお酒に押され、日本酒の裾野が狭いというのも問題になっているんです。私たちも知らない日本酒の魅力を発見していただいて、全国の酒蔵さんみんなで進化していけたら、こんなに嬉しいことはないですから」

●宮本さん「朝日酒造さんが率先して、新しい日本酒の飲み方を提案するというのはどうですか?久保田を知らない人はほぼいないわけですし。例えば、割って飲む用の日本酒を発売したり、カクテル用のお酒をつくったり。久保田というブランディングとは別に、20代向けのブランドラインを作っていく。そうすると、日本酒業界全体も活性化する気がします」

○今井さん「ありがとうございます。そうですね、日本酒にまだまだ馴染みのない僕と同年代の20代の方々が、従来の日本酒とは違った魅力や楽しみ方に出会えるよう、社内に提案していきたいと思います!」

おわりに

白熱した久保田トークいかがでしたでしょうか。デザインリニューアルした「久保田 純米大吟醸」をはじめ、幅広い方々に日本酒を楽しんでもらうために、朝日酒造もKUBOTAYAも努力を重ねていきたいと思います。皆さんも私たちと一緒に日本酒の新しい魅力を探してみませんか?


Photo_Ikki Fukuda(宮本さん) Interview & Text_Megumi Waguri Edit_Yasushi Shinohara