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酒造り歳時記「秋洗い」
2020.08.13

特集

酒造り歳時記「秋洗い」

「秋洗い(あきあらい)」とは、次期の酒造りに備えて、酒蔵の道具をすべて磨き、点検・修理する重要な作業です。

米の収穫が終わり酒造りが始まる「秋」に、蔵のすべての道具を「洗い」、酒造りにむけての準備を行うことから、「秋洗い」と呼ばれています。
しかし近年は、夏から酒造りを開始する蔵や、一年中酒造りを行っている酒蔵もあり、秋洗いという言葉はあまり耳にしなくなってきました。
朝日酒造も、酒造りの開始日が年々早まっており、今年は8月下旬からスタートするため、秋洗いではなく、“夏洗い”になっています。

朝日酒造は6月25日に、今期仕込んだお酒を全て搾り終え、「皆造(かいぞう)」を迎えました。この後も、濾過や貯蔵…などの作業は続きますが、酒造りはひと段落。
と思っていたのも束の間、皆造の翌日から“夏洗い”が始まりました。2カ月後にはやってくる次の酒造りに向けて、蔵の道具をすべて磨かなくてはなりません。良い原料と技、そして良い道具があるからこそ、良酒を醸すことができます。
ある蔵人は「道具の磨きが始まった時から、次の造りはスタートしているよ」と話していました。

もちろん日々の酒造りでも、道具の洗浄や蔵内の掃除は入念に行っていますが、夏の大掃除の時には、洗米機や蒸米機などの大設備も解体し、徹底的に磨きます。
酒造りの時は、大きな機械音を響かせながら、大量のアツアツの蒸米を出していた蒸米機も、今日は静か。これまでとは違う蔵の光景に、夏の訪れを感じました。

蒸米機は細かく解体し、小さな部品もひとつひとつ丁寧に磨きます。単に洗浄することが「磨き」ではありません。点検し必要があれば修理し、部品の交換も行っています。
無事に今期も酒造りを終えられたことへの感謝の気持ちと、次期も共に頑張ろうとの想いを込めて、磨き上げます。

“夏洗い”にはもうひとつ、恒例の作業があります。「呑切り(のみきり)」を行う前の準備です。「呑切り」とは酒蔵の夏の伝統行事で、お酒を貯蔵しているタンクの呑み口を1本1本開栓し、着色はないか、香りや味の熟成度合の品質検査を行っています。今年は7月28日に「初呑切り」を行いました。

初呑切り前には、開栓するすべてのタンクの吞み口を、歯ブラシで磨きます。洗剤を使うとその香りが吞み口に移ってしまうため、水だけで洗浄します。
時間をかけて育ててきたお酒が、最後に通って生まれてくる道なので、品質が落ちないよう最後まで入念な作業が続きます。今年はなんと200本の吞み口を磨きました。
酒造りと同じく、繊細な職人技がキラりと光っていました。

このように、これまでの酒造りをともにした道具への感謝と、次の造りへの想いを馳せながら“夏洗い”を行っています。
大掃除も酒造りと同じ、チームワークが重要です。朝日酒造には4階建ての大きな蔵が2つあり、磨くところが多くあります。それぞれの作業場のメンバーで話し合い、メンテナンス工程を決め、日々コミュニケーションをとりながら着々と磨いています。
次期も、良い原料と道具、技で、心ひとつに良酒を醸していきます。